代理店に刺されちゃう!?デジタル広告運用の新しいビジネスモデル
坂本:本日は、株式会社ワンチームの谷田さんをゲストに、ユニークな課金モデルの広告運用ビジネスのことや、広告業界の闇・ダークサイドみたいなところに切り込んでお話できればと思います。
谷田:株式会社ワンチームの谷田と申します。インターネット広告のコンサルティング事業、パートナー事業をしている会社で、Google, Yahoo!, Facebook, Twitter などの運用型広告に関する事業をしています。
坂本:創業されたんですか?
谷田:僕は創業者ではなくてサラリーマンなんですが、YouTube や note での情報配信などけっこう自由にやらせてもらってます。
谷田:会社自体は 12 年くらい前からこの事業体を取っていて、共感して参画しました。
広告代理店が構造的に抱えている問題点
谷田:弊社ワンチームは枠を売るのではなくて、『どう運用するか』を売っていくというか、代理店に近いのですけれど、ちょっとモデルを変えてやっている会社です。
坂本:どういうところが『代理店っぽくない』ところなんですか?
谷田:1 番は、ビジネスモデルのところです。僕はもともと、広告代理業を斜めから見ているところがあったんですよね。例えば、ナショナルクライアントと呼ばれるような予算が多い広告主が厚遇される点。広告代理店は多くのリソースを投下しますし、そういった案件をどう取るかが勝負というところがあるじゃないですか。
坂本:逆に、予算がある程度ないと、大手の代理店は受けてくれなかったり、いい人材をアサインしてもらえなかったりという話も聞きます。
谷田:また、予算をどう使い切るか、を重視している点。『お客様の事業を成長させる』ことに結びつくとは限らないゴール設定に、違和感をずっとおぼえていたのです。
坂本:代理店としての短期的な売上最大化だとか、担当者の評価みたいなところには、重要かもしれないですけどね。そういう意味だと、広告主と広告代理店とで利害が一致しないケースもけっこうあるんですねぇ。
谷田:僕の友達にも、ベンチャー・スタートアップ企業で働いている人や、起業してる人、あとは NPO や社会貢献活動の人たちなんかが多くいます。「彼らの予算感で、一生懸命に広告運用をやってくれる会社があるのか」というと、あまりいなかったりするのです。
坂本:確かにそうですね。
谷田:すごく良いビジョン・良いコンセプトがあって、これから成長が期待されるスタートアップがあったとします。「予算 50 万円で実績を作っていきたい」とか、最初の一周目の PDCA を回したいときに、大手の広告代理店にいくと「100 万円以上出してください」「500 万円以上は必要です」と断られたりするケースが、けっこうあるのです。
坂本:予算が一定以上ある広告主しか代理店とマッチングできないみたいな。婚活アプリみたいですね。
谷田:はい。逆に「予算10万でやります」みたいな、中小・零細企業向けの代理店も、もちろん存在するのですけど、そこは.........
坂本:言っちゃいましょう(笑)
谷田:『アカウントを作って、流して終わり』みたいな運用をされてたりすることも、かなりあるんですよね。
谷田:アカウントを作って、予算設定をして、数ヶ月放置。運用コストは掛けられないし。そうすると、中小・零細企業さんは「広告、ぜんぜん成果が出ないやん」と、目茶苦茶ネガティヴイメージがついてしまう。
坂本:プロの目から見ると「この設定じゃ駄目でしょう」みたいなことを、平気でやってしまっていると。
谷田:はい。例えば検索広告でいうと「このビッグワードで設定して、どうするの!?」みたいな。
坂本:そういう会社さんが、インハウスで運用するというのは、難しいものなのですか?
谷田:「インハウスやればいいじゃない」ってよく言われるじゃないですか。
坂本:言いがちですね。
谷田:でも、例えば Google Analytics をどう見るかとか、広告アカウントをどう作るかなど、知らなきゃいけないことがたくさんあるんですが、どれだけググっても、よく分からなかったりします。
坂本:確かに。古い情報なんかも混じってたりしますしね。
谷田:そう。最新の知識や、ベストプラクティスを知らないままインハウス化しても、雑運用になってしまうんですよね。
ワンチーム社のアプローチ
坂本:谷田さんのワンチームさんは「予算や知識がない広告主さん」に対してサービスを提供しているということですか?
谷田:だけではないんですけどね。そういうところもサポートしています。
坂本:さっきの話でいうと、予算が小さい広告主さんだと、お金取れなくないですか?
谷田:一般的にはそうですね。インターネット広告業界というのは「広告費の 20% を代理店手数料として頂きます」というビジネスモデルが主なので、予算が小さな広告主さんは「お金にならない」と見られてしまいがちです。
坂本:そこをどう解決しているんですか?
谷田:簡単に言うと、月額定額制の業務委託費みたいな感じにしています。お客様から、業務内容や運用難易度というのをヒアリングした上で、『何をどれくらいやるか』ということを明確にするのです。
坂本:なるほど〜。『1 ヶ月にどれだけ PDCA を回すか』とか。
谷田:そうです。月額 6 万円、15 万円、30 万円などプランがいくつかあって、「この料金感だと、月に 1 回 PDCA を回して、その時にこういう改善案を出して、こういうアクションをしていきますね」みたいな話をして、合意の上で契約するという方法です。
坂本:それはすごく良いですね。ただ、僕自身は業界にずっといるから、その価値というのが分かるんですけど、お客様側はどこまで分かるものなんですかね。例えば僕らの目から見ると「この運用にマージン 20% 取るのは高い」みたいな状況だったとして、お客様は果たしてそれに気づくものでしょうか?
谷田:契約にもよりますけど、広告主は代理店から広告アカウントを見せてもらえないことも多いんですよ。PowerPoint や Excel で作られたレポートだけ見ている場合、代理店側がちょっと数字に色や解釈を付けたりもできるし、何の作業や媒体にどれくらい使っているかは、どうにでも見せられるじゃないですか。
坂本:見破る術がないですよね、データへのアクセスがないと。
谷田:広告主さんが気づくのは難しいですね、正直。
マーケで大事なのは広告運用だけじゃない
谷田:僕らが営業活動をする際は、「1 ヶ月の間にどういうアクションをとるか」「それをしたら、何が起きるのか」など、全部明示化します。その中には、インターネット広告がメインではあるものの、それ以外が含まれることもけっこうあるんですよ。
坂本:それ以外っていうとどういうものですか?
谷田:CRM、MA (マーケティングオートメーション)、ステップメール、データベース、などの設計や運用とかですね。広告費の何%という形で貰っているわけではないので、僕らの会社の工数がフィーに見合えば、お客様が触りきれない部分を業務としてやれるわけなんです。
坂本:なるほど。周辺領域含めて、広告運用だけでなくその前後の工程もサポートできるって感じですね。
谷田:おっしゃる通りです。
坂本:ちょっと変なこと聞くんですが、例えば「予算がすごく大きいけど、そんなに運用工数かかっていない、でもフィーは 20% 取ってます」みたいな案件があったとして、「ワンチームでやったら正味 5% くらいで済みますよ」というケースもあるわけですよね。
谷田:時々はありますね。
坂本:そういうことをやっていると、代理店から刺されませんか?(笑)
谷田:10 年このモデルでやってますが、まだ刺されたことはないです(笑)。嫌う人はいるかもしれないですけどね。ただ、意外にバッティングしていないんじゃないかと思うんです。
坂本:バッティングしていない?
谷田:僕らの哲学・考え方や仕事を求めるクライアントさんと、どちらかというとある程度丸投げできる先を求めているクライアントさん、とニーズが違うと思うので。
坂本:それぞれちゃんとニーズとサービスがマッチしていると。
谷田:僕らは固定の月額費、業務委託型モデルなので、インハウスで運用している会社でも「ここからここまでの範囲だけやってほしい」とか「ここから先は任せたい」みたいに、一部の業務だけ切り出して任されるというのも、けっこうあったりするんですよね。インハウスか代理店か、みたいな議論ではないので、ポジションが違うと思います。
坂本:なるほどね〜。
ワンチーム社の手がけるBtoBtoBビジネス
坂本:「これからどうなっていこう」みたいなのはあるんですか?
谷田:僕らは信念を持ってこのビジネスモデルをやっているので、少しずつ広げていきたいなと思っています。あと今やっているのは、B to B to B モデルというものです。
坂本:B to B to B モデル。(目が点)
谷田:何をしているかというと、例えば印刷会社さんなどの従業員に対して、ワンチーム社が研修してあげて、デジタル広告代理業ができるようにしてあげている。
坂本:ほうほう。どういうニーズがあるんですか?
谷田:例えばスーパーマーケットのお客様からチラシのオーダーが来たときに、「ちょっとオンライン広告も配信したいな」というニーズがあるじゃないですか。金額的に小さいから、広告代理店は絶対取りに行かない案件なのだけど、ニーズとしてはある。
坂本:あ〜なるほど。でもオンライン広告の知識がないと受けられないですね。
谷田:なので、その会社の従業員 2-3 人を、うちで OJT 的に研修トレーニングをさせてもらうんです。ワンチームは、そういった研修・トレーニング・コーチング業務のような形で請負をして、そこをフロントに、クライアントさんの比較的小規模なニーズの案件を受けるみたいなことをしています。
坂本:いいですね。自分で勉強しろと言われても、なかなか難しいですもんね。
谷田:そうすることで、今までのインターネット広告の価値をうまく利用できていなかった人たちも、メリットを享受できるようになるので、デジタル広告が民主化していくと思っているんです。広告主さんも広告代理店も媒体側にも、仕事が出来る・増える仕掛けを作っていきたいなと思っています。
坂本:なるほど、面白いです!
広告業界をもっと透明で良いものにしていきたいのである
坂本:僕の note や YouTube チャンネルは、マーケターや広告主の方、あるいは代理店の方とかにも見てもらっているんですけど、そういう人たちに向けて、何か伝えたいこととかありますか?
谷田:僕らは広告代理店さんと敵対したいわけではなくて、この業界に対して、必要なものを必要な分だけちゃんと届ける、何をしたらどうなるのかというのをちゃんと明示化していく、というのを大事にしていきたいなと思っています。その部分で、僕らのリソースや価値観、考え方がはまるのであれば、ぜひお声がけいただきたいなと思います。
坂本:ありがとうございました。期待していたほどダークな話ではなく(笑)、普通に良い話でしたが、良い勉強になりました!
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この記事は、僕の YouTube チャンネル『坂本達夫のスタートアップ酒場』の動画を書き起こし&一部編集したものです。他にも面白いインタビュー動画が沢山あるので、こちらのリンクからぜひチャンネル登録して応援してください👍