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入社してもうすぐ2ヶ月!現時点の知識でMolocoのことを解説するよ

先日こちらの note でアナウンスした通り、2021 年 9 月 1 日から Moloco という会社で働いています。

「Moloco ってどんなサービスなん?」って聞かれることがちょいちょいあるので、入社約 50 日たった現時点の知識で解説しようと思います!

Moloco とは

Moloco を一言でいうと『機械学習の会社』です。

えっ、モバイルの DSP でしょ!?って思ったアナタ。まずは、ご存知いただいててありがとうございます。笑

なのですが、我々のコアは『機械学習』であり、その力を一番うまく役立てているのがアプリのマーケティング領域で、DSP プロダクトなのです。

ちなみに他に "Moloco Engine" や "Retail Media Platform" といった新規プロダクトも仕込んでおり (ベータ版で一部のクライアントに提供)、これらも DSP ではない形で機械学習エンジンを活用したユニークなソリューションです。要望があったら別途解説しますね。

どこにあるの?

モロッコの会社なの?って聞かれることもありますが(笑)、シリコンバレーの会社です。本社は Redwood City という、Mountain View (Google の本社) や Palo Alto (Facebook, AppLovin の本社)のちょい北 (San Francisco 寄り) にあります。

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豆知識としては、創業者が韓国生まれの韓国人 (大学院から米国) というのがちょっとユニークです。韓国人がシリコンバレーで立ち上げたグローバル企業でしかもユニコーン (2021 年 8 月時点で $1.5B の時価総額)ということで、韓国ではちょっとしたヒーロー扱いをされていると聞きます(笑)。

彼を見てると、日本人がグローバル企業を作るには何を変えないといけないんだろう...って考えるヒントが多くて、めちゃ勉強になります。

彼も含めて、創業チームや社員には元 Google がけっこういます。僕も、僕の上司も元 G。エンジニアやプロダクトチームにも Google マフィアが多く、ゴリゴリにアルゴリズムを磨いてるらしいです。

US からはじまり、アジア、ヨーロッパに順調にビジネスを展開しています。アジアでは上記理由もあり韓国オフィスが一番大きく、ビジネス系以外のメンバー (戦略系、プロダクトチーム、バックオフィスなど) も多くいます。あとは中国、シンガポール、日本ですね。

創業チームがアジアへの理解が深いことと、アジアのモバイル市場が大きいという理由から、外資アドテク企業の中では日本を含むアジアへの投資にとても積極的です。僕が採用された背景もそのあたりにあります。

Moloco DSP って何がすごいの?

DSP って何ですか、っていう話はいったん端折りますね。正式名称を "Moloco Cloud DSP" というのですが、いわゆる RTB で SSP から買い付けを行なっている、ピュアっピュアな DSP です。

DSP = Demand Side Platform
SSP = Supply Side Platform
RTB = Real Time Bidding

Google AdExchange (AdX)、Mopub (最近 Twitter から AppLovin が買収), Pubmatic といったグローバルな SSP、AppLovin や Unity などの海外系ネットワーク (裏側の仕組みは RTB)、アドジェネや fluct といった国内 SSP など、RTB で買えるところはほとんど接続しています。他にもいっぱいあるんですが、公開できるとこ・できないとこを把握していないので(笑)、気になる方は「ここ繋がってる?」って個別に聞いてください。

特徴としては大きく3つあります。
① フラウドが少なくとてもクリーン
② 機械学習がイケててパフォーマンスが良い
③ 上記を守る愚直で強固なカルチャー

①フラウドが少なくとてもクリーン

AppsFlyer、Adjust、Singular、Kochava など、多くの MMP (モバイル計測プラットフォーム) が発表するランキングで、「量だけでなく、質もいい媒体」として常に上位に入っています。

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GAFA や Twitter、AppLovin、Unity、IronSource といった、『大手プラットフォーム』『SDK を配っているアドネットワーク』が上位のほとんどを占めるなか、独自在庫を持たない DSP としては世界 1, 2 みたいな位置付けです。

(余談ですが、元 Criteo の天野さんがいる Liftoff も同様に上位の常連です。割とプロダクトや思想的に Moloco とけっこう近い、と僕は思ってます)

前述しましたが、Google, Mopub, AppLovin, Unity など元々『クリーンな』ところにしか接続していません。フラウドはゼロにはならないものの (Google 実装してる媒体が 100% フラウドじゃない、ってことを僕らは仕組み上担保できない)、極めて少ない。さらには、その先でどの面で露出したのか・獲得したのかなど、全て管理画面でオープンにしています。

インストールや課金といった成果指標も、MMP に承認され、postback で送られてきたものをそのまま管理画面に表示してるだけなので、改ざんの仕様もありません。

逆にいうと、配信先の媒体が開示されていなかったり、数字が MMP と管理画面とで大幅に乖離しているようなネットワークや DSP は、疑いの目で見たほうがいいですね。

むしろフラウドは「やる側」ではなく「やられる側」なんですよね。CPM でトラフィックを先に買ってるので、フラウドにインストールを奪われてしまうと丸損。しかも機械学習が乱れてパフォーマンスが落ちたりと良いことないので、あらためてフラウドを全力で滅していかなければ...と決意を新たにしています

②機械学習がイケててパフォーマンスが良い

これが一番説明難しい(笑)。広告主に説明しないといけない代理店さんや、媒体のことをちゃんと理解していたい広告主さん以外は、この章は読み飛ばしていただいても差し支えないです。

Google 出身のエンジニアたちが、創業から 3 年間売り上げゼロで、ずっとエンジンを磨き続けていた (今もずっと磨いてる) と言えばちょっと凄さが伝わるでしょうか?

会社によっては、例えば A というゲームアプリで機械が学習した結果を、B という別のアプリのプロモーションの際に流用して、ってやってたりもすると思うんですが (どこかの資料で見たような)、Moloco では案件ごとにそのアプリのデータをゼロから集め、機械学習をやり直しています。

なので、ゲームに強い弱い・非ゲームに強い弱い、とかも無いです。Google, Facebook など他の怪しくないアドネットワークで獲得できているのであれば、Moloco でも同等水準のパフォーマンスを出せる可能性が高いです。

集めているデータは
① アプリの実利用データ
② 広告配信データ

の 2 種類。

① はアプリから MMP を経由して (許諾を得たものだけが) 送られてくる postback のことで、アプリのインストール、起動、課金、その他イベントデータが含まれます (狭義の個人情報は含まれません)。これを使うことで既存ユーザーの利用状況から、どんなシグナル (OS、時間、デバイスの種類、通信環境、などめっちゃ種類ある) が各アプリにとって良いサインなのかどうか、を学習することができます。レッツ・マシンラーニング!

広告配信が始まってからは ② のデータも加えて、より分析を精緻にしていきます。そうして、毎秒 300 万あるという広告リクエストの全てに対し、数千・数万ある広告案件 (数万はないかな?ちゃんと数えてないw) のそれぞれ、期待されるリターンがいくらで、いくらで入札するのが最適なのか、をゴリゴリ計算しています。レッツ・マシンラーニング!

そんなことをやっていたら Google Cloud からも表彰されちゃいました。

Google とか Facebook の広告配信も、基本的には裏では同じようなことをやっていて、だからパフォーマンスが良いと思うんですよね多分。Moloco を使うと、それと同じようなパフォーマンスが、Google や Facebook といったプラットフォーム "以外" でも得られる、というのがざっくりとしたケーパビリティの解説になります。

アプリ広告の機械学習について詳しく知りたい方は、昔書いたこの note が参考になるかと思います。当時は Google や Facebook を念頭に置いて書いたんだけど、自分がど真ん中に来ることになるとは。

DSP で、この技術を真剣に掘りまくってた会社が、これまで無かったのか、それとも Moloco より上手くできていないだけなのかは、ちょっと分かりません。もしかするとそこに投資するより、いかにバレずに click tracker を裏で発火させるか、みたいなほうが手っ取り早く儲かったのかもしれませんね。...お言葉が過ぎました。

とにかく、愚直に磨き続けてきた機械学習という刀が、大手プラットフォームと比べても遜色ないぐらいめちゃくちゃ良く切れるね、ってことで、この数年すごい勢いでビジネスが伸びている、っちゅうわけです。

レッツ・マシンラーニング!

③上記を守る愚直で頑固なカルチャー

上に書いたようなことって、業界にちょっといる人であれば誰でも「そりゃ大事だよね」って分かるぐらい『当たり前』のことなんですよね。ゆーたら「英語を上達させたいなら、毎日勉強したほうがいい」「痩せたいなら、食べる量を減らして、運動を増やせ」ってのと同じぐらい。言うのは簡単やねん。

なんですが、それを実行し続けるのは難しい。なんせ誘惑が多いですからね。フラウドのところでもちょっと書きましたが、短期的にちょっと儲けるのであれば、機械学習に投資するよりもずっと簡単に、手っ取り早く出来るハック (悪い意味の) があります。

例えば僕が入社してからのこの短期間でも、とある代理店からこんなことを質問されました。

「click URL を impression URL のところに入稿したいんですが、Moloco では可能ですか?クライアントもそれで OK してます」

(意味わかんないけど興味ある、って方は下記の記事を読んでみてください。ここでは詳しく解説しません)

誰が悪者かをこの記事では議論しませんが、この行為そのものは業界団体が定めるクリックやインプレッションの定義から外れています。(参照) なので、日本チームはそのリクエストをお断りしました。

こういう時、どういう立場を取るかってところに会社のスタンスが出るし、現場がそれをどれだけ遵守できるかってところに組織の強さが出ます。それらを総称して会社のカルチャーと呼ぶなら、Moloco のカルチャーは極めて正義感が強く、愚直で、頑固です。

正しくない・クライアントのためにならない、けど短期的には受け入れたほうがお金になる。そういったものに対しては特に口うるさく注意喚起しなくても、現場レベルで NO と言うというのが標準化されています。

入社前に、色んなルートを駆使して Moloco がフラウド媒体でないことは裏取りしていましたが(笑)、それを守るカルチャーの強さ、現場への浸透度あたりは、入社してはじめて知ったポジティブな驚きでした。

強いカルチャーの根源にある長期思考

なんでそれが実現できているか、というのは別で 1 記事書けるぐらい色々あるんですが、端的に言うと経営チームが長期思考だから、というのが大きいと思います。

Moloco は短期的には IPO を目指していますが、社長は常に「上場したい」ではなく「上場して、その先にこんな会社になりたい」という文脈を話します。彼も Google 出身なので、そこそこの成功には興味がなく、グレートカンパニー鬼塚を作りたいっていう欲求があるんでしょう。

そのためには、短期的に売り上げをあげるだけではダメで、長期的に積み上がるものを作らないといけない (フラウドで作った売り上げは早晩崩れ、長期には貢献しないからダメ)。小手先ではなく長期的に競争優位になるものに投資したほうがいい (機械学習や、人・組織・カルチャーなど)。アドテク一本足ではなく複数の収益の柱を作るべき。

これらは『ビジョンを作るために作られたビジョン』ではなく、長期で成功するというゴールから逆算するとビジョナリーであるほうが合理的だと思うんですよね。それが理解できる・共感できる人が集まっているし、リーダーたちもブレずに同じメッセージを発信し続けている。良いお手本です。

おわりに

当初の想定より最後のほうがエモくなってしまったけど、入社して 2 ヶ月弱で見た Moloco はこんな感じです。とても良いプロダクトだし、めっちゃ良いカルチャーの会社です。

日本でビジネスを展開し始めてから約 2 年、新しい良いものに敏感な、あるいは、僕らのプロダクトやビジョンに共感してくれる、先進的な広告主さんや代理店さんに支持されて、徐々にビジネスが立ち上がってきています。

とはいえ、業界内での認知や、単なる『モバイルの DSP』以上のものだよっていう認識は、まだまだだなぁと思っています。

Moloco がよりメジャーになれば、アプリのデジタルマーケ業界がもっと良くなると確信しているので、ぜひこの長い記事を読んで共感してくれた方は、「Moloco ってのがイケてるらしいよ」と周りに教えてあげてください。

広告主さんや代理店さんで、また Moloco を使ったことがない方は、ぜひお気軽にご連絡ください。Google, Facebook 同様セルフサーブで運用できるので、敷居は実は低めです!web サイトのフォームTwitter @tatsuosakamoto の DM、直接の知り合いの方は Facebook メッセ、などなんでも welcome です。

あと取材とか講演依頼とかも受け付けてます。年末にかけて少しずつ自分自身も露出増やしていく予定です。

そんなかんじですかね!

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