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現代版『はだかの王様』〜偽りのスタートアップ〜

出来損ないの起業家

むかしあるところにひとりのヴェンチャーキャピタリスト (以下「VC」) がいました。

VC は有望なスタートアップに投資することが大好きです。

ある日、オフィスに有名メガベンチャー出身の 2 人の起業家 (共同創業者) がやって来ました。

けれど、ほんとうは起業家ではなく、VC をだまそうと...いうつもりがあったのかどうかは分かりませんが、実際にプロダクトを作り上げることなんて出来ない、夢想家あるいはポンコツです。

この 2 人は、魔法のようなテクノロジーで、世の中にイノヴェーションを起こすことが出来ると言うのです。

そして VC に「この技術で作ったプロダクトのポテンシャルが分かるのは、かしこい者だけで、おろかな者には分からないのです」と伝えます。

それを聞いた VC は、アソシエイトの中でだれがかしこいか、誰がおろかな者なのか判断することができると思いつくのです。

そして早速、この 2 人にどっさりとシードマネーを投資し、すぐにプロダクトを開発するように命じました。

2 人は忙しそうにコードを書いているふりをしましたが、本当はテキストエディタには一行のコードも書かれていません。

そのうえ、2 人は投資してもらったお金を、豪華なオフィス、キラキラなホームページ、西麻布のラウンジでほぼほぼ使ってしまいました。

本当のことが言えないアソシエイト

しばらくして、VC は事業が立ち上がったか、知りたくなりました。

けれども VC は自分が見に行かずに、大学生インターンのアソシエイトに見に行かせる事にします。

なぜなら、VC はそのアソシエイトは高学歴で、意識が高く、そろそろ調査やソーシングだけでなく投資先のマネジメントの経験を積ませても良いぐらい優秀だと思っていたので、プロダクトの価値が分からないはずはないと思ったのです。

意識の高いアソシエイトは、綺麗なオフィスに出向きました。

しかしアソシエイトには、もうすぐ完成するというプロダクトも、口頭ベースではほぼ発注がもらえているというクライアントも、もちろん発注書も見えなかったのです。

でも、それを口に出していう事はできませんでした。

そして、戸惑っているアソシエイトに、共同創業者たちは素晴らしいとされるそのプロダクトの特徴と市場性の説明をし、感想を聞いたのです。

おろかで、将来性のあるスタートアップを見抜く力がないと思われたくないアソシエイトはあわてて「とても見事で事業ポテンシャルの大きいプロダクトだと、VC に報告します!」といいます。

VC はアソシエイトの報告を聞いて、とても喜びました。

そして、少ししてまた他のアソシエイトに見にいかせます。

そのアソシエイトも前のアソシエイトと同じ目に合いました。

出来あがったプロダクトどころか、書かれているコードの一行も見えません。

しかし、アソシエイトは自分が実はあまり頭が良く無い、やる気と SNS での勢いだけの人間とバレたら大変だと思いました。

ですから、見えないプロダクトをほめて、事業計画書もピッチ資料も素晴らしいと言います。

後戻りのできない VC

とうとう VC は、自分でスタートアップを視察しに行くことにしました。

「素晴らしいプロダクトではございませんか?」と先に視察したアソシエイトたちが Macbook Air につながった外付けディスプレイを指さしながら言います。

しかしどうしたことでしょう、VC には何も見えなかったのです。

ですので、VC は困り果ててしまいます。

でも、アソシエイトは見えたと言うのです。

自分が VC のパートナーにふさわしくなく、おろかだという事をみんなに知られる訳にはいきません。

そこで「ユニコーン間違いない!気に入った!」というのでした。

お供の者たちにももちろんこのプロダクトは見えませんでしたが、みんな口を揃えて「なんと素晴らしいプロダクトでしょう!」と言います。

そして VC に、まもなく行われるアルファベット 3 文字のカンファレンスでこのプロダクトとスタートアップを注目株としてアピールするように勧めました。

なので VC はこのスタートアップに、ミドルステージに投資する別の VC 2 社と共同で追加投資を行ったのです。

キラキラスタートアップの出来上がり

2 人の共同創業者はさっそく VC と一緒にドヤ顔で記念写真を撮り、調達リリースとエモい note を公開し、TechCrunch と The Bridge から調達リリース時の取材を取り付け、VC はこのスタートアップを Forbes のインタビューで『一押しの投資先』として紹介します。

そして起業家は「このプロダクトはステルスで開発しているので、使っているユーザーのことを聞いたことは無いでしょうが、近い将来大きなトラクションをお見せできるでしょう」と伝えました。

「なんと有望なスタートアップだろう!」とアソシエイトにほめられて、VC はそのままカンファレンスに出ていきます。

そうすると、登壇し終わった VC を囲んで、スタートアップ村の人々は声を合わせて、「さすがこの VC はなんてイケてる会社に投資するんだ!」と今までになかった位、VC の投資先をほめました。

皆が良いと言っているスタートアップなので、自分だけがおろかもので実は全っ然良さが分からないことを、知られたくなかったのです。

メディアのパワーこええ

でも、そのスタートアップでエンジニアとしてインターンしていたと自称する人が、はてブで「このプロダクトは、何も出来てないよ!」と言い、別の関係者と名乗る人も「ぶっちゃけ売り物もなければ、売上が立つ見込みもなくて、詐欺っすね」匿名で書きます。

すると、みんな薄々感じていた疑念が、ぽつぽつと tweet され始めるのです。

そしてとうとう、界隈の人も全然関係ない人も声をそろえて、「このスタートアップは何の価値も生み出していない!」といいます。

しまいには切込隊長が関係者への取材記事を Yahoo! ニュース個人に寄稿し、創業者の西麻布での派手な遊びっぷりや "お行儀の悪い" 方々との交流が雑誌に載り、日経から企業名こそ伏せながらも「加熱し過ぎたスタートアップ投資 実態のないVBが巨額の資金調達」という記事が出て、3 週間ぐらいこの話題は燃え続けました。

VC もこれはヤベエと思ったのですが、「資本政策は、後戻り出来ないのだから、なんとか回収しなければいけない。」と、買い戻し無理くり M&A での exit のルートを模索し始めるのでした。

おわりに

特定のスタートアップや個人のことを想定して書いたわけではマジでありません (強いて言えばセラノスぐらい)。

娘(6)がお遊戯会で『はだかの王様』の劇をやったので (「王様は裸だ!」と言う町人の役でした。可愛かった😍)、ちょっとパロディ書いてみよっかな、って思っただけです本当です。

エンタメとして楽しんでいただけたら、ぜひスキ!や、SNS で感想つきでシェアしてもらえると嬉しいです。

1 件でも投げ銭がもらえたら、来月中に新作書きます。笑

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