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アプリインストール広告の初期の機械学習ってどういうメカニズムで動いているの?

Google のアプリインストール広告についての質問をいただきました。

便宜上すべて Google 広告って書き方をしていますが、例えば Facebook 広告とかでもメカニズムは基本同じです。

詳しくない人でも分かるように細かいところは端折って書いているので、アドテクマニアや機械学習どっぷりな皆さんは怒ったりしないでくださいね。笑

質問:単価いくらで始めて、どのように下げていくのが良いのか

広告を出稿する際、「最初から低い CPI の目標値を入れると、機械学習が進まず全くインストールされないので、最初のうちは一定期間、"高い"目標インストール単価を設定して機械学習を進ませながら徐々に単価を下げていくのが良い」と言われました。

とはいえ、高単価 (CPI > LTV) の期間が長いほど赤字が膨らむので、できるだけ短い期間で学習を終わらせて、目標 CPI にたどり着きたいと思っています。

どのくらいの単価から初めて何週間くらい、そして何段階くらいかけて徐々に下げていくのが効率が良いのでしょうか?

「最初は単価高めで出して、データが溜まってから...」

広告ネットワークの営業の人の常套文句ですねw

ぼくも AppLovin で広告主サイドの営業をしていた頃はよく言ってました。

間違っているわけではないのですが、中小デベロッパーの目線に立ってもっときちんと説明すればいいのになぁ、っていつも思います。

1 日 50 件以上、2-4 週間

約 1 年前、2018 年 11 月末の記事ですが、Google の公式コメントによると「機械学習には十分なデータ量(最低 1 日 50 件以上)が必要」とあります。

そしてそれを「2-4 週間」継続する必要があるそうです。(参照: https://goo.gl/9Zy53y )

なので、この言葉を信じるなら、CPI 単価は「1 日 50 件インストールが出る程度」にまで上げて (CPI いくらで何件インストールが出るかはアプリ次第)、2-4 週間それを継続する必要があるということになります。

1 日 50 件ってのがなんでなのかはよく分からないですが、個人的にはそれほど違和感のある数字ではないです。

(Google よりも配信先メディアや接触ユーザー数が少ない媒体であれば、もっと少ないデータでも最適化できると思います)

アプリインストール広告の機械学習とは

Google はその間になにを学習しているのか?というのを簡単に解説します。

新しく Google 広告キャンペーンを開始したとき、Google はそのキャンペーンやアプリについてのデータを一切持っていません。

一方で、広告を配信する先のメディアはたくさんあります (検索、たくさんあるアプリ面 (AdMob)、YouTube、Google Play 内、など)。

どこでどの広告が何%ぐらいクリックされて、そのあと何%ぐらいダウンロードされるのか、が分からないと、本来はどの広告をどれぐらいの優先順位で配信すべきか判断できないんですね。

なので、それぞれの配信面から限られた (数%程度) トラフィックを「新規案件のテスト用」みたいに確保していて、そこの枠の中で新しいキャンペーンを試しに流してみて、クリック率やコンバージョン率のデータを集めます。

(シンプルに説明するために変数を「配信面」だけにしていますが、実際には Google が持っている多くのデータ、例えば「年齢」「性別」「地域」「興味関心」「他にどんなアプリを持っているか (Android)」など多くの変数で、広告のクリックやインストールに繋がりやすい条件が何かというのを計算 (学習) しています)

一定数の (データが十分信頼できると言える) データ量が溜まって、インストール単価・クリック率・コンバージョン率から算出される CPM が、その媒体における他の案件の CPM と同等かそれ以上であれば、その媒体の「テスト用以外の」トラフィックが割り当てられます = 安定的・継続的にインプレッションが出るようになります。

CPM が低ければ、その媒体へはあまり広告が配信されなくなります。

そしてまた相性の良い媒体を探して、次の配信先のテスト枠に広告を配信し始める...ということをやっているのです。

最初の CPI が低いと何がよくないのか

テスト出稿時の CPI が低いと、機械によって判断される「予想される CPM」も相応に低くなるので、テスト用に割り当てられるトラフィックさえも (他のテスト案件に対して) 優先的に与えられず、すーんごいチョロチョロとしかインプレッションが出ない (媒体によっては一切出ない) ということになります。

非常に高い確率で CPM が低い案件、を配信してしまうと、Google としても儲からないし、ネットワークを配信しているメディアにとっても収益が下がってしまうので、誰にとっても良いことないですからね (という理由で、機械的にオークションで負けて配信されないことになる)。

そうすると、相性が良い (= CPI が低くても、クリック率・インストールが高いため CPM が十分高く、インストール数がとれる) 媒体を見つけるまでに (そう判断するために統計的に十分なデータが溜まるまでに) すごい時間がかかったり、"潜在的に"相性がいいかもしれない媒体にそもそも広告が一切配信されないまま、みたいなことになりかねないのです。

なので Google 広告の場合、十分なデータが溜まるまでにだいたい必要と考えられるインストール数が「1 日 50  x 14-30 日」で、700-1500 といったところなのでしょう。

例えばハイパーカジュアルゲームで、CPI $1 で 1 日 50 インストールが実現できていれば、Google 広告の学習に必要なコストはだいたい $700-1,500 (7.5-16 万円前後) ってことになりますね。

追記:Google 広告の中の人からのコメントだよ!

(2019/10/23 19:00 追記ここから)

ポケモンGOとドラクエウォーク (と他にも色々) の合間に Google で勤務されていて、Google アプリ広告の初期からずーーーっと担当されているフレンズの Keiji Takeda さんがコメントつきでこの blog をシェアしてくれました!

役に立つ内容だと思うのでこちらにも転載しておきますね。

"とてもわかりやすい広告機械学習(とくに初期学習)の説明ブログ。弊社公式コミュニティページ(https://support.google.com/google-ads/thread/4489960?hl=ja)の紹介もありがとうございまっす!
コメントにも書きましたが、実際 Google のアプリ広告 (以下 AC) では、初期に Bid を高めたほうがいい理由として下記のようなご案内をしております。
・入札単価によって、AC がテスト、学習、補正する範囲が決まる
・学習期間中に積極的に (高めに) 入札を行うと、AC が検討する広告枠が増える (○○ にばっかり出て、×× にあまり出ないなーは、大体これのせい)
・これによって新しいフォーマットやオーディエンスへのアプローチが可能になり、CVR が向上する場合がある
結果として入札単価を上げる前より CPA/CPI が下がるケースは多いので、あとはブログで紹介されているとおり上述の 13 ヒントに準拠していただけると (プロダクト仕様上は) 最大効果が引き出せます。"

(追記ここまで)

クリエイティブの数がますます重要に

ここからオマケです!

文中でも紹介したこちらの記事 Google 広告 ユニバーサルアプリキャンペーンでインストール数とアプリ内行動(課金など)の獲得数をバランス良く最適化する場合の 13 のヒント の中に、こんな記述があります。

9. [クリエイティブ] 動画広告を 20 本入稿する
縦型(2:3)・横型(16:9)・正方形(1:1) / 尺の異なる動画などさまざまなパターンを試します。
また、「いますぐインストール」などユーザーにとってほしいアクションを明示的に訴求しましょう。

Facebook も今年 (2019 年) より成果をあげている広告主はそうでない広告主より、11 倍もの数のクリエイティブを作成し、テストしている、という調査結果を発表していました。

本文中で解説したような、広告配信からのデータ蓄積・学習からの細かいパフォーマンス予測・最適化って分野は、どう考えても人間がやるより機械にやらせたほうが良いです。

成果が出るってだけじゃなくて、人間そんな作業ばっかずっとやってるの辛いからね、続けられないと思います。笑

その結果、いま運用型広告のパフォーマンス上げるには、クリエイティブが大事だよねってすごく注目されています。

クリエイティブは、質ももちろん大事なんですが、上記の通りなんだかんだ数もめちゃくちゃ重要です。

ある程度仮説を立てたとしても、どのクリエイティブが刺さるか・パフォーマンス良いかは、実際ユーザーに当ててみないと分からないですからね。

解決したい運用型広告業界の課題

かといって、じゃあ似たような広告、特に動画広告を何十種類もデザイナーに全部作らせるというのも、外部に出すとけっこうなコストがかかるし、内部でやるとデザイナーには喜ばれないし、みたいな悩みをけっこう聞くようになってきました。

(とはいえ、クリエイティブをたくさん作ってテストする重要性、に気づいていない会社や経営陣のほうがまだ多いですが。それはそれで問題)

僕が Smartly.io で解決したいと思ってる業界の課題もまさにここで、マーケター不足がずっと叫ばれている中、機械に出来ることを人間にやらせてちゃイカンでしょうと。

キャンペーン設定や入稿作業、入札や予算の変更、レポーティングみたいな「作業」は、早く機械に全部やらせましょうと。

クリエイティブも、「同じデザインで商品だけ変えたバージョンを量産」とか、「毎日売り上げトップの商品だけを集めた動画を作る」みたいな、繰り返し発生する・大量の処理が必要な「作業」を、デザイナーにやらせてちゃいけないでしょうと。

そういう業務は全部機械にやらせることで人間を解放して、人間にしか出来ない「仮説を立てる」「頭を使う」仕事にもっと時間を割けるようにしたい。

(あと、デジタル広告業界の人がちゃんと定時に帰って、家族ともっと時間過ごせるようにしたいw)

だから僕は Smartly.io をちゃんと日本に定着させないといかんのです。

業界のみなさん応援してください、というか使ってくださいw

(日本語の事例紹介ページ も少しずつ記事増やしていってます!)


おまけがけっこう長くなっちゃいましたが、今日はこんなところで。

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