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「広告運用ツール」が日本でメジャーになっていない理由を僕なりに分析

日本・中国・韓国以外のほとんどの国では、大手・中堅以上の広告主や代理店がデジタル広告を運用する際に「全てを手作業でやる」というのは余り一般的ではありません。

なので Smartly.io 以外にも色んなツールがあり、それぞれ違った特徴があって、シェア争い・開発競争でしのぎを削っています。

日本ではそういったツールを使った運用はまだメジャーではないし、また Smartly.io 以外に過去に参入した・しようとした会社も苦戦してたり撤退してたり。

Smartly.io の営業を約 8 ヶ月やってきて見えてきた、「なんで日本ではデジタル広告の運用を未だに手作業でやっている (ところが大多数な) のか」を、僕なりにまとめました。

特定の会社や立場 (広告主、代理店、ツール事業者、プラットフォーム等) を批判したり貶めたりする意図もないです。見る人によっては刺激的に感じる (i.e. 俺らを dis ってるのか?) こともあるかと思いますが、そのつもりはなくあくまで現状分析です。

あくまで私見 (会社としての立場でもありません) ですし、読んで怒らない方、へーそうなんだ勉強になるなって生暖かく読んでくださる方、面白いからっつってディスカッションしてくださるような方、だけ読んでください。

我ながらなんて身勝手な。笑

それでは前置きが長くなりましたが、"「広告運用ツール」が日本でメジャーになっていない理由" 本編スタートです!

【クライアントサイドの問題】

(1)代理店文化の問題 その1

1. 広告予算の多くは広告代理店商流を通る (特に大手広告主)
2. こういうツール導入の意義はざっくり2つある
 ①パフォーマンス向上
 ②工数削減・作業効率アップ
3. 広告代理店はツールフィーを広告主に請求する (ことが多いようだ。自分たちの業務効率改善、という文脈で導入するのでなければ)
4. 費用を払っている広告主からすると、上記①に対しての費用対効果でしか判断しない。
 作業は通常の代理店マージンの中で広告代理店に丸投げしているから、効率が上がっても広告主はメリットを享受しない
5. インハウスで運用している (= 上記①②のメリットを両方享受できる) 広告主に比べて、購入の判断がよりシビアになる

(2)代理店文化の問題 その2

1. クライアントの「解決したい課題」を一番よく知っているのは、代理店の中では営業部門
2. 営業は忙しいから新しい (細かい) 技術をキャッチアップするのが難しい
3. 代理店全体で見ても、営業それぞれに新しい技術・トレンドを学ばせるのは非効率
4. したがって「ツール導入検討」を担当する横串部署が、Smartly.io のようなツール事業者と相対することが多い
5. そのような部署は、個別のクライアントの「真の課題」を知らない・深く理解していないことが多い
6. なので「この課題を解決するために、このツールをこう使おう」といった個別具体的な発想が誰からも出てきにくい
7. 表面的な課題の解決のためにツールを使うみたいな話になりがち

(3)成長よりも予算優先

1. 海外のユニコーン企業は成長に対するプレッシャーがキツい (i.e. YoY +20%だと低成長と見られる)
2. そのため「成長を加速するための解決策」を積極的に探している
3. 成長のためならコストがかかっても仕方ないと考えている (成長を加速させるほうが優先度が高い)
4. 一方で日本は、比較的「予算を守る」ことのほうが優先されがち
5. どれだけ ROI が高くても、決められた予算以上投資しない、とか普通にある (AppLovin 時代、まじでUS本社に理解されなかったw)
6. 目標達成すると「もっとアクセル踏もう」ではなく「もっと効率上げられないかな」っていう"カイゼン"的な発想をする

(4)人力でなんとかしちゃう

1. 問題を「ツールで解決」するより、同じコストかけるなら「人力で解決」に走っちゃう会社が多い (あくまで海外との比較)
2. 特にデジタルマーケ領域は、(みなし残業制度とかで) 人間に長く働かせても追加コストがあまりかからない (短期的に) って会社が多い (代理店も広告主も)
3. あと、ツールにやらせると質が低いからやっぱ人間にやらせないと、みたいな発想も多い気がする。クリエイティブ量産とか
 もちろん質は大事なんだけど、人力で 90 点のものを 10 個作るより、機械も使って 70 点のものを 100 個作ったほうが効果あるのでは? みたいな発想があんまりない (下の画像参照)

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ただし、同じ作業ばかりずっとやってる運用メンは会社を辞めちゃったり (採用・維持コストが実はかかってる)、そもそも経営とマーケが分かる人材の数が業界に少なかったり、って環境なので、次第に "人依存" はなくなる…といいなぁと思ってるw

(5)海外はスケールが大きい

1. そもそもターゲットにしているマーケット (人口) が日本単体 (max 1.2億人) よりも数倍以上大きいケースが多い
2. 地域や言語などが複数になるため、作業内容が複雑だったり、作業量が多いという風になりがち
3. 手作業でやると人件費かかる、ミスがおきる、作業に飽きた従業員が辞める (日本よりカジュアルにw 流動性が高いので)

【事業者サイドの問題】

(1)言語の問題

1. これまで日本に進出してきた海外製広告運用ツールはほとんど英語 UI、サポートも英語 (例外があったらごめんなさい)
2. ビジネスが立ち上がるまではローカライズに投資できない、投資しないから立ち上がらない、というニワトリ玉子問題
3. なので日本人ユーザーにとって「ツールを勝手に学んで勝手に使う」というのはけっこうハードル高い
4. だから本来はカスタマーサクセスが一緒にプランニング・オンボーディングして、使いこなせるところまで伴走しないといけない

のだけど...

(2)カスタマーサクセスが下手だった

1. カスタマーサクセスがそもそもいない、日本人じゃない、日本にいない (中国、韓国、シンガポールから、みたいなケースがけっこう多かった模様
2. したがって「有効なツールの使い方を見出す」ところまでいかずに導入しない (営業途中で失注する) か、導入しても「使いこなす」ところまで至らず churn してしまっているケースが過去多かったみたい


こんな感じです!また何か思い出したら追記するかも。


8 ヶ月前には見えていなかったこういう学びを踏まえて、Smartly.io は少しずつ日本での営業方法を変えています。

「デジタル広告を全部人力で運用してた」ってのが昔話になる世界線をマジで日本に定着させようと頑張ってるので、ぜひ応援宜しくお願い致します。

(具体的には、広告主・代理店各位はぜひ使ってみてください。それ以外の方は、興味持ってくれそうな人を紹介してください。笑)

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