勉強会レポート「はじめてのBtoBセールス〜"プロ"のセールスになるために〜」
今年の春から月 1 で開催している、投資先向けの勉強会。
いい名前が思いつかないので「たつおゼミ」と暫定的に呼んでいるのですが、毎回スペシャルなゲストの方を講師としてお呼びして、「はじめての〇〇」というタイトルで各分野の基礎的な内容を教えていただいています。
今回は、最近ロゴがアップデートされたApp Annie社 (アプリの市場データを提供するグローバルトップ企業) の日本代表である向井 俊介さん (イケメン) に、「BtoBセールス」というテーマで、より単価が高く「売る」ことが困難なB向け商材の営業についてレクチャーしてもらいました。
↑App Annieの新ロゴ
記事を読んでもらえばわかると思いますが (わかるように書けてるといいな...)、向井さんはセールスを高いレベルで「言語化」されています。
そのため、App Annie社内で、日本以外のメンバーに対しても同様のセールストレーニングを行ってきており、その際は本来この記事にあるトレーニングを半日かけてやっていらっしゃるそうです。
ぎゅっと凝縮しているとはいえ、内容モリモリです。覚悟して読んでください。笑
アジェンダ
1.コミュニケーション
2.メソッド (forecastの精度をいかに高めるか)
3.テクニック (対クライアント)
向井さんのプロフィール
2002-2007 ネットワンシステムズ
2007-2011 Dun And Bradstreet Japan
2011-2014 Gartner Japan
2014-現在 App Annie Japan
- 2019年1月からカントリーマネージャに
note: https://note.mu/shun0718
Twitter: https://mobile.twitter.com/Shun_Mukai0718
上のスライドに出てくる "Spec Selling" "Solution Selling" "Value Selling"とは
Spec Selling
- スペック訴求
- 価格勝負
Solution Selling
- 課題解決訴求
- ニーズ把握と課題解決力勝負
Value Selling
- 価値訴求
- ニーズ発掘とニーズの最大化が勝負
下に行けば行くほど、一般的には価格が大きくなる。
いち営業としては「高いものが売れる」のと「言語化できる、トレーニングができる」などはマーケットバリューを高めてくれる。
1.コミュニケーション
Social Style
- 世界に広がるコミュニケーション理論
- 4つに分類される、人のコミュニケーションのパターン (厳密には16分類)
- 目的1: 自分のスタイルを理解する
- 目的2: 相手のスタイルを理解する (顧客、同僚、上司など)
- それに合わせて自分のスタイルとの相性を考えたり、やり方変えたりできる
- 環境や立場によってSoclal Styleは変化する
(実際に勉強会では時間をとって診断をして結果をシェアしました。このサイトでどうやら出来るようなので、よければやってみてください)
Type1: エクスプレッシブ
- 感情豊か、情熱的、明るい雰囲気で自分の思いを言う
- ノリを重視、注目されたい。新しいこと、話題性のあることが好き
- 対エクスプレッシブ: 共感を示しながら、要約をすると喜ばれる
- エクスプレッシブ同士で商談すると、すげー盛り上がるけど何も決まらない、とかになりがちw
- 対極にいるAnalyticalな人と相性悪い
ちなみに、営業向けの勉強会だからか、参加者のマジョリティがエクスプレッシブでしたw
Type2: ドライバー
- エグゼクティブに多い
- 結論から言えや、ってタイプ
- オープンクエスチョンが嫌い
- 感情出さないけど、内には強い意志がある
- 対ドライバー: ビジネスライクに、端的に、ロジカルに、シンプルにアプローチする
- 勝負事に負けん気を出す
- 自分で決めたいから、選択肢を示してあげる
ちなみに、僕はドライバー (の中ではエミアブル要素強め) でした。ちょっと意外だった
Type3: エミアブル
- いい人、敵を作らない
- 自分から強く意思決定する、とかゴリっと通す、とかはしない
- 社内に味方が多いから、スパイとして使うと有力 (教えてくれない、ってことも少ない)。人を繋いでくれたりもする
- エグゼクティブクラスにはあんまりいない
- 声が小さい傾向。じっとと目を見てきたりもしない
- 「分かった」と言いながら返事を先延ばしにする人が多い。その場合はなんらかの問題がある可能性があるので、問題の相談相手になってあげるとよい
- 会話にゴールを求めなくてもいい、共感する時間が、彼らにとっては価値
Type4: アナリティカル
- 論理的、具体的、細かい、淡々と話す
- 管理部門に多い
- 彼らにとっての沈黙は考えを整理する時間。せかさず待ってあげる
- 納得を得るため、前例やデータを示してあげる
- デッドラインを決めておく (時間がかかることが多い)
相手のタイプに自分を合わせるのが、基本的にはよい
プロジェクト組むときにはバランスよく集めないと、うまく進まない
見極め方
笑顔出てるとエクスプレッシブ、そうじゃないとドライバーかな
エミアブルは「あっすいません」が多い
自分のタイプも、時間やポジションによって変わるし、変えた方が幅が出る
2.メソッド
これを覚える目的は、案件管理、クロージングの確度を上げること
MEDDIC Training
- 取らなきゃいけない案件を、期日までに、きっちり取る
- Metrics (効果測定基準)
- Economic Buyer (決裁者)
- Decision Criteria (判断基準) に影響を与える
- 相手の Decision Process を理解する
- Identify Pain (問題点を把握する)
- Champions を作る
測定可能なものにして、案件確度を高めることに繋げる。
Identity Pain
- ペインの把握から商談がはじまる
- ペインの裏返しがニーズ
- ニーズとゴールはよく同じだと履き違えてしまう
- ゴールと現状との差分がペイン
- ゴールはIRとかにのってたりするが、変化する
- なのでニーズも変化する
- ペインは難しい。お客さん自身が現状を把握していなかったりもする
(坂本感想: これ「価値は相手の変化量」と同じこと言ってるなー、って興味深く聞いてました)
EB (Economic Buyer)
- 企業・事業のP/Lに責任を負っている人
- 拒否権を持っている、だから重要
- なるべく早期にコンタクトすべき
- EB は「役員会議」みたいな「場」だったりすることもある
- 合議制だとつらい。声の大きい役員が決めるのであればまだ制し易い
- エミアブルの人が教えてくれたりする
- EB を握れていないと、forecast として弱い
Champion - 味方
- 会社の中で権力と影響力を持っている
- 味方についてくれるひと。顧客先内部の営業担当者
- 勝手に営業してくれたり、アドバイスや競合情報をくれたり、競合を止めてくれたりする
Championの特性
- キャリアアップを強く望んでいがち (出世してくれるとEBになる)
- イノベーターマインド(変化を好む)
- 知的で、リスクをとって、経営的視点を持っている
Championを探す方法
- 重要プロジェクトに関わっていたり、出世頭だったり
- ”良い質問をする人"に注目する
- 社外の人に尋ねてみたり
- 社内でいろんな人に声をかけられてたり
"にせChampion"に注意
- 愛想がよすぎる、時間がありすぎる、のりがよすぎる、しゃべりすぎる、「自分が1人の意思決定者である」と言う
- 見分け方「Economic Buyerに会わせてもらえますか?」→実際には影響力ないから、セッティングすることができない
- 切ってもあんまりenemyにならない
- 完全に別ルートでいくしかない
Championになってもらうには
- ビジネスバリューだけではなく、プライベートバリューを満たしてあげる (褒められる、認められる、昇進する、早く帰れる、とか)
- EBも同じ
DC (Decision Criteria = 意思決定基準)
- 4つの物差し
- 財政的インパクト(ROI)
- 技術的優位性
- 過去のデータ
- 学習曲線/使いやすさ
- 判断基準をコントロールできれば、評価をコントロールでき、案件をコントロールできる
DP (Decision Process = 意思決定プロセス)
- 非公式な活動も含む (お伺い、根回し、とか)
- プロセスまで理解していると、リスクのレベルは変わる
- 日付軸で合意する必要がある
- 5, 8, 12月(長期休暇)、1-2月(インフルエンザ) のときのバックアッププランがあるかどうか
DPを把握するための要素
- 組織の把握
- EBと政治的な結びつきがある人物
- 競合の動き
- “潜在的な問題の予測、確認、対応”
マネージャーとして、営業メンバーにMEDDICを聞いて答えられなかったら、次にとるべきアクションがわかる
営業にも、2:6:2の法則がある。
上位2割のプレイヤーは勝手に売ってくるし、そのやり方は再現が困難
真ん中の6割のためにこのMEDDICを使って、成功の再現性を高める
下2割は"新陳代謝"
3.テクニック
SPIN Training
- 複雑かつ大型な商談に使うためのテクニック
- "複雑な案件"の定義: 下図
カスタマー・ディシジョン・サイクル
- すべてはニーズから始まる
- お客さんが「ニーズを”自覚”」するのが大事
- 自覚とは「自分の言葉で語れる」状態
- そこまでもっていくステップとしては
1.ニーズを明らかにする
2.ニーズが、買い手にとって「重要だ」という段階まで発展させる
3.そのニーズを満たす解決提案をする
- 買い手がニーズを自覚していることは少ない = 潜在化の状態
- ニーズ認識を高める = 顕在化させることが重要となり、その手段として「質問する」プロセスとして開発されたのがSPIN
SPINとは
Situation Question (状況質問)
- 商談の初期に
- だれに、何を、どう聞く、という事前準備をする (調べられることは先に調べておく)
- 不快感・警戒心を与えないようにする
- 状況質問は「売り手だけが得をする」ものだから
購入動機
- 問題・不満・障害の解決への必然性・欲求をもたないと、購入することはない
- 一般的な営業は、欲求をかりたてる前にクロージングしがち
価値のバランス (Value Equation)
- 問題の大きさ (= 案件サイズ) vs 問題解決のための対価 (費用、時間、精神的負担など)
- 「高いね」って言われるのは、問題の大きさを自覚させあげられてないから
- 「問題の大きさ」をいかに大きくできるか
- できないと「価格」がcriteriaになるし、値下げしないといけなくなる
ニーズとは
- 潜在ニーズと顕在ニーズがある
- 潜在ニーズにあるうちは、買い手の関心は低く、購入意欲が育たない
- 顕在は、問題が言語化されていて、それを解決する必要性をお客さんが自覚している状態
Problem Question (問題質問)
- 買い手の不満や障害について聞く質問
- 潜在ニーズを明らかにするために行う (そのあと顕在化させ、大きくする)
- 買い手が抱えていると思われる、現在の不完全な状況や不満を聞き出す
- 不完全な状況であることに気づいていない場合が多い
- 状況を十分に認識した上で
- 現在の不完全な状況や不満をストレートに聞くのではなく、様々な角度から
- 「他の会社は」こういうことで悩みがちなんだけど、御社はどう? 「一般的には」こうですが… など、枕詞を利用し、回答しやすいように誘導していく
- 相手のSocial Styleによって聞き方が変わる (ロジック、ケア、ノリ、etc)
- 見るべきなのはあくまでEBのペインでありニーズ、続いてChampion
- そこにいくまでの地ならしとして現場とのコミュニケーション
- そこが握れていないなら、面取りをして、フォロワーを増やす
Implication Question (示唆質問)
- 買い手に不完全な状況の認識を強めさせ、それを問題として明確に自覚させる
- 「問題」を大きくするので、商談を大型化させる
- ビジネスサイズ、事業サイズが大きいときに有効
留意点
- タイミング:
- 潜在ニーズを表明したあと
- ただし購入に結びつくほど強いニーズになっていないとき
- 内容:
- 買い手が表明した不完全な状況が及ぼす「他の大きな問題や、他の領域への悪影響」について質問する、ことによって自覚させる
- 準備:
- 必ず事前の準備 = 仮説立案をする
示唆質問をするもひとつメリット
- 多少突っ込んだ質問であっても、買い手のことをちゃんと考えている印象を与えるので、信頼関係の構築にも役立つ
- 問題質問だけで止まると、なーんかやなかんじがする
- 状況質問、問題質問は初回訪問でやる
- インサイドセールスからもってきた情報をもとに、初回に仮説いくつか持って行って示唆質問を当ててみる
- 当たらなかったとしても、お客さんの意思が右のほうにいく
- そうすると壁打ちのなかで真のニーズが向こうから出てきたりする
- 出てこない場合は、相手がチャンピオンじゃないんじゃないかと疑う
質問と提案のタイミング
- 相手がペイン・ニーズを自覚するところまで待ってからじゃないと提案しちゃだめ
まとめ
- なによりもニーズ
- ニーズは潜在化してることが多いので、顕在化が重要
- それを大きくする = Painを大きくさせること
- そのためには示唆質問が重要
- 忘れちゃいけないのは「EBのPain」を最大化させること
- そうやって早出した案件を確実にクローズするためにMEDDICを!
- そのときに話し方やトーンなどは、ソーシャルスタイルに応じて自然に振る舞えるように、普段からトレーニングしよう
以上です!
記事にするとすごい長いけど、いざメモ編集すると、あらためて学びがめちゃめちゃ深かったことに気づく。。
最後に改めて、向井さん 超ありがとうございました!!
and special thanks to...
会場はVoyage Groupのオフィスをお借りしました。
また食事はHIGH FIVE SALADのパワーサラダを提供いただきました。