どうプロダクトをポジショニング・ブランディングしていくかというお話 #SaaSLovers Day5
#SaaSLovers って何やねん
SaaS 愛に溢れた人達が毎日(平日)何かしらノウハウを共有する、という素敵なリレーブログ企画が『SaaS Lovers』です!全部の記事がマジで知の宝庫なので、ぜひ Twitter で #SaaSLovers で検索して他のも読んでみてください。本記事の末尾にもリンクつけておきます。
今月ここまでの記事はどれも学びに溢れる内容ですが、本記事は "体験談" "失敗経験" "悩んでいること" のアソートメント (詰め合わせ) です。形式化されたナレッジを得ることを期待されると、期待外れになるかもしれません。
この記事を読んで、皆さんにも「自分だったらどうする?」と考えてもらったり、あわよくば note や SNS 上でコメントしてもらったりして、対話を通じてお互いに学びを深められたらいいなぁ、なんて思っています。
お前誰やねん
申し遅れましたが 坂本達夫 といいます。結構いい教育を受け、楽天 → Google → AppLovin (2021年4月に上場) ときて、2021 年 5 月現在フィンランド発のマーケテック企業『Smartly.io』の日本立ち上げ・事業責任者を務めています。
Smartly.io が何なのか知りたい方は、下記の記事を流し読みしてみてください。ざっくり分かります。
本業以外では、アプリ企業中心にコンサル・アドバイザーをやったり、YouTuber をやったり、エンジェル投資をかれこれ 40 社強やったり、深夜 TV 番組で MC をやったりと、良く言えば "幅広く活動" しています - 悪く言えば "何やってるかよくわからん"。
あくまで本業としては
海外の最先端の広告・マーケティング関連のテクノロジープロダクトを、日本に持ってきて、セールス・ビズデブ・マーケを通じて、ゼロから事業を立ち上げる
というのを生業にしています。(前職 AppLovin、現職 Smartly.io ともに日本第一号メンバーです)
ちなみに結婚してて、小学生の子どもが 2 人います。
免責事項やで
ポジショニングとかブランディングとか、マーケティング関連の専門用語っぽいのをタイトルに入れると、偉い方々から「言葉の定義が違う」「そんなのはポジショニング/ブランディングじゃない」「全然分かってない」などとご指摘が入りそうで、公開前からビクビクしています。
事実、ぼく全然分かってません!学歴は悪くないんですが、受験と単位取得を要領よくやっただけで、マーケティングとかブランディングとかちゃんと学んだこともなければ、いまだに本を 1 冊まともに読み切ることも出来ない...。
アカデミック的にはおかしいことや、言葉の定義が間違ってることも多いと思います。が、あくまで僕の体験や考えをまとめた『個人的な感想です』ので、予めご了承ください。
そのかわり、かなり赤裸々に書いていることだけは保証します。
Smartly.io って何なん
恐らく {{1-CTR:link3}}% の方は先ほどのミルクボーイ漫才を読んでいらっしゃらないと思うので簡単に説明すると、Smartly.io は
SNS 広告の色んな課題を解決し、
(広告パフォーマンスを高めたり、
運用工数を削減したりすることで、)
クライアントの利益を成長させる
SaaS プロダクト & サービス
です。
この時点で整理されてないのが明白すぎて、書く気力が急速に萎えているのですが......頑張って続きを書きますね。
Smartly.io って 2013 年の創業からずーーーっと SNS 広告運用を Easy, Effective, Enjoyable (簡単で、効果的で、楽しい) にする SaaS プロダクトを提供してきてる会社なんですよ。
どちらかというと SMB ではなくエンタープライズ (大企業) 向けに、広告プラットフォーム自体がすぐには対応しないようなニッチな (でも、クライアント企業にとってはクリティカルな) ニーズに応えて、ずーーーっとプロダクトを磨いてきています。本社にはエンジニアやプロダクト担当のメンバーが 100 人以上。
そうすると当然『Smartly.io で出来ること』ってめちゃくちゃ幅広くなるんですよね。
よく営業してると「機能一覧出してよ」とか「広告マネージャーだと出来ないけど Smartly.io で出来ることって何があるの?」みたいな質問を受けるのですが、無理無理無理。全部説明すると多分 10 時間以上かかるし、ぶっちゃけ全部は僕も把握してません。。
Smartly.io とは Excel なんやで
例えるなら Smartly.io とは Excel みたいなものです。
Excel って何ですか?「表計算ソフトです」
Smartly.io って?『SNS 広告運用ツールです』
Excel って何が出来るんですか?「むっちゃ色々できます」
Smartly.io って?『むっちゃ色々できます』
Excel の価値はいかほどですか?「Excel 使って解決できる御社の課題の大きさ次第です」
Smartly.io の価値は?『御社の課題の大きさ次第です』
Excel 使うべきですかね?「そりゃそうでしょう」
Smartly.io 使うべきですか?『そりゃそうでしょう』
で導入が決まれば楽なんですが(笑)、当然そうはいかないので、いずれ Excel ぐらい "誰もが当たり前のように使う" アプリケーションになることを信じながら、目の前のお客様に Smartly.io の価値を信じていただくべく啓蒙活動を続ける日々です。
ようやっとここから本題 - 苦心しとる話
で、そんな「何でもできる」ツール、ネガティヴに言うと「何が出来るのかピンとこない」ツール、いや単なるツールではない、お客様の成功を後押しするサポートや、各種プロフェッショナルサービスも提供している総合ソリューション、をどうポジショニング・ブランディングするのか苦心しています...!というのがこの記事の本題です。
苦心しているとはいえ、さすがにもう日本進出してから 2 年以上たつので、「Smartly.io って何なん?」という質問はたくさん受けてきたし、その度に最適な答えを考え、探し、試し、修正してきています。
前提条件も時を経るにつれ変化する中、僕自身の「Smartly.io とは」の表現も変わってきました。
(ここから回想入ります)
2019 春〜秋 直訳時代
とりあえず本社やシンガポールで言ってる「Smartly.io ってのはこういう会社・サービスなんやで」ってのを、日本語に訳してそのまま使っていました。
例えば "Powering Beautifully Effective Ads" っていうフレーズをそのまま訳して、”美しく、効果の高い広告を、効率的に" ってキャッチコピーを作ってみたりね。2019 年のアドテック東京のサイトにその残骸が残ってたりもします。
コピーライティングの勉強なんてしたことないので、けっこう悩みながらひねりだした日本語です。皆さんだったら "Powering Beautifully Effective Ads" どうやって訳します?w
改めて見直してみると、『誰に』『どんなベネフィットを提供するのか』あるいは『どんなペインを解消するのか』が見えてこない...。
「美しくて効果の高い広告を、効率的に運用したいな〜」なんてお花畑みたいなことを考えているマーケターさん、あんまり会ったことないですからね。(特に我々がターゲットにしている業界トップ企業では)
2019 冬 〜 2020 春 クリエイティブ 推し時代
続いて「Smartly.io は SNS 広告のクリエイティブに強いキラーツールだ」というメッセージを強く打ち出す時代が訪れました。訪れたと言っても、僕が勝手にそう決めてやり始めただけですがw
日本での営業をし始めてから半年ほど経って、ようやく Smartly.io の海外での立ち位置や強み、日本の市場関係やプレイヤーが "視えて" きました。
海外では既に Digital Disrupter と呼ぶ『パフォーマンスドリブン』で『広告運用ゴリゴリ』なトップクライアントはほぼお取引先として "取り切って" いました。が、日本ではまだ全然。なので、言葉を選ばずに言うと『ゲットしやすいとこ』からゲットするのが良いんじゃないか、と。英語でいうと low hanging fruit ってやつです。
なので、一番『広告マネージャでは出来ないけど、Smartly.io なら出来て、効果が目に見えて分かる』機能が刺さり、かつ予算も大きいところを狙おう!ということで【EC・トラベル・不動産・人材】業界をターゲットにすることにしました。(直後、コロナでトラベル業界は対象から除外)
これらの業界は【フィードに山ほどプロダクトがあって、ダイナミック広告に大きな予算を割いている】広告主です。
一部の例外を除いて、その業界の多くの広告主は広告代理店に運用を任せているということが分かりました。ってことは、Smartly.io が提供している数多くの機能のうち、『広告運用の工数減らしますよ』系はあんまり響かないんですよね。広告主からすると、広告代理店の中の人がどれだけ楽になろうが関係ないし、広告代理店の方も『コストかけてツール導入して、人力作業減らそう』みたいなのにはあんまり興味なさそうだったので。
なので、"広告マネージャが提供できない" かつ "広告代理店にもできない" 機能で、工数やコスト削減ではなく "パフォーマンス向上に効く" ものを推そうと。そこから【Facebook のダイナミック広告のクリエイティブを自由にデザインできる】【色んなパターンをテストしてガンガン効果改善できる】という機能を中心に推していこうと決めました。
で、パートナー (Facebook) や代理店さんに協力してもらいながら、色んな会社さんに提案して、いくつかトライしてもらって、ほぼ全てのケースで目覚ましい成果が上がりました。CPA が何十パーセント下がりました、みたいなレベルであからさまな成果が。Facebook のイベントでも大々的に取り上げてもらったぐらいです。(その節は関係各位にめちゃくちゃお世話になりました...!!)
かくして『Smartly.io は、Facebook/Instagram 広告のクリエイティブをイイ感じにするサービス』というブランディングが爆誕したわけです。
『わかりやすさ』の功罪
どうでしょう、Smartly.io が何なのか、ずっと分かりやすくなったと思いません?特に素晴らしいのが、"何に困ってる人" が Smartly.io に相談すればいいかがハッキリわかるという点です。Facebook や Instagram の広告を配信していて、クリエイティブに困っている会社。いっぱいありそうですねぇ。
これぐらいシンプルで、かつ、他の代替ソリューションが無いとなると、パートナー企業や広告代理店の人も Smartly.io を紹介しやすくなります。「クリエイティブ困ってるんですか?いいツールがあるんですよ、Smartly.io って知ってます?」
ですがイイことばかりではないんですよね。クリエイティブ関連の機能って、Smartly.io のフルポテンシャルの中のせいぜい 20% ぐらいでしかないんです。認知はとれるんですが、過小評価されてる状態なわけです。
なので例えば、運用にかかってる工数を下げたいとか、天気情報みたいな外部 API を広告配信に使いたいとか、機能ではなく僕らの「ノウハウ」や「頭脳」が借りたいとか、サービスやサポートみたいなソフト面とか、Facebook 以外の SNS 広告プラットフォームもまとめて運用できることとか、SaaS ならではでどんどん進化していってることとか、
いろんな価値が認知・認識されないし、そういうのに困ってる広告主の検討対象にはならないので、コッチの人たちを引き寄せる代償に、それ以外の人たちを遠ざける結果になってしまうわけです。
あと、顧客にとっての Smartly.io の価値が『クリエイティブの課題解決』だけになってしまう、つまり解決すべき問題のサイズが小さくなってしまうわけなので、利用料に対して得られるベネフィットが小さいんじゃね?料金高くね?っていう風に費用対効果の面で厳しく見られてしまったりもするわけです。
(もちろん、クリエイティブの課題がめちゃくちゃ大きい会社は、それだけでも十分に費用対効果が合うって判断してくれますが)
そして最後に、churn のリスクが高まるという問題。これはグローバルで、より多くの機能を複合的に使っているクライアントのほうが、churn 率が低くなるというデータが出ていました。「こんだけ色々使ってるんやから他に乗り換えるのも大変やし、コスト対効果も見合ってるよな」になるっていうシンプルな話ですね。
複雑なサービスの中から、一部機能だけを切り出して「うちはこういうサービスです」って単純化して言いたくなるって気持ち、分かる人いますかね?笑 個人的にはこれ麻薬だなと思ってて。短期的には小さいリターンがあるんですが、後々得られたかもしれない大きなリターンを逃すことに繋がるリスクがあるんじゃないかと。
なので 2020 年の夏前に『Smartly.io は Facebook/Instagram 広告のクリエイティブをイイ感じにするツール』という見せ方をやめました。
2020 年 夏 〜 現在 愚直にエンタープライズセールス
『Smartly.io はクリエイティブのツール』という看板を下ろしてからどうしているかというと、すんごい愚直にエンタープライズセールスとカスタマーサクセスをしています。救いのない話です。笑
"分かりやすいけど自分を安売りするフレーズ" は、使わないことにしました。それによって得られていた "軽い" リードは一旦諦めました。
そのかわり、目の前の顧客を成功させて実績を作ることに、より多くのリソースを割くようにしました。顧客の課題を理解して、期待するアウトプットを明確にし、一緒に計画を立て、実行をサポートし、業務の『欠かせない一部分』になれるよう 1 つ 1 つの案件に一層丁寧に取り組むようにしました。
そうするとその成功が、別のお客様を連れてきてくれるようになりました。同じような課題を抱えている人だけではありません。『SNS 広告で困ったら、Smartly.io に相談すれば何とかしてくれそう』というのが、一部のマーケティング界隈の方や、パートナー企業の間で少しずつ知られてきているようなのです。ありがたや。
優れた SaaS とは人間そのものである、というポエム
正直、今でも「Smartly.io って何なの?」という質問に答える際は、とても苦労しています。色んな表現やトークスクリプトを作っては試しているのですが、これだ!という最適解には辿り着いていません。
でもそれってある種、仕方ないことだと思っています。だって例えば、「あなたは何者ですか?」と聞かれたとき、皆さん何て答えますか?
会社名とか役職・肩書きは、その人の一面にしかすぎません。学歴や職歴も同じです。本当にその人のことを理解しようと思ったら、生い立ちからそれまでの遍歴、趣味や性格、人間関係、考え方、など色んなことを知る必要があります。どこまで知ってもなお、その人のことを 100% 理解することは出来ないかもしれませんよね。
SaaS も人間と同じなのではないでしょうか。機能それぞれを説明しても、その SaaS 全体を理解したことにはなりません。成り立ちから歴史、目指している世界観やビジョン、働いている人、クライアントやパートナー、など多面的・総合的に見ることで、初めてその SaaS を理解することに近づくことが出来ます。
その SaaS と付き合いたいかを決めるのは、それからでも遅くはないと思うんですよね。少なくとも SaaS の側は、長くお付き合いしたいと思っているんですから。焦って付き合って、すぐ churn は嫌よ。
なのでこれから「Smartly.io って何なの?」と聞かれたら、僕はこう答えようと思います。
興味を持っていただき有り難うございます。
僕らのことをよく知ってもらいたいし、
貴方のこともよく知りたいです。
なので、まずはお互いのことをお話しませんか?
あとがき
この記事のタイトルを見て飛んできてくれた方の期待に沿ってる内容に、果たしてなっているんでしょうか。めちゃくちゃ自信がないです...
少しでも誰かの参考になっていれば嬉しいです。ぜひ感想を SNS やコメントでもらえると嬉しいし、記事シェアいただけると涙目で喜びます!
万が一この記事を読んで Smartly.io のことをもっと知りたくなった方がいたら、直接のお友達であれば Facebook や Twitter から連絡いただければと思います。あるいは →こちらのページ← からお気軽に資料請求・問い合わせしてください。まず自動返信メールが飛んで、そのあと僕が個別に連絡します。
#SaaSLovers リレーブログは来週月曜日からも続くので、ぜひ SaaS 界隈の皆さんは全てチェックしてみてください。僕自身もすごい楽しみですし、きっと色んな学びが得られるはずです。