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【はじめてのマネジメント】マネージャー1年生が初期にインプットしたこと #SaaSLovers 2日目

自分の時間とお金だけを使ってゲームをプレイするなら、好きなやり方をしたらいい。
しかし通常『ビジネス』というゲームは、自分に加え、メンバー・会社・株主・外部パートナー・顧客など、多くの関係者のリソースを使ってプレイするものである。

であれば、攻略本を読んで、ゲームのルールを理解して、最大限効率よくプレイする義務があるというものだ。

というわけで本記事では、昨年 (2021 年) 9 月に (ほぼ) 生まれて初めてマネージャーになった僕が、最初の数ヶ月でどんなインプットをしたのかを紹介します。

同じように比較的経験の浅い・新しいマネージャーの方や、これからマネジメント方面のキャリアを積みたい方、マネジメントの業務割合が増えてきた起業家の方、などに多少は役に立つのではないかと思います。

自己紹介

坂本達夫と申します。1985 年生まれで気づけばアラフォー、2 児の父です。

外資系の広告・マーケ領域のテック企業の日本進出〜展開初期フェーズを得意とするサラリーマンで、専門は営業。
ですが「必要なことは何でもやるよ」スタンスで、ビジネス開発・マーケ・経営企画・経営管理・採用など色々ちょっとずつかじってきました。広く浅く。

楽天Google (AdMob) を経て、2015-2019 AppLovin (US🇺🇸のアドテク企業、2021 年に IPO) の日本 1 人目社員、2019-2021 Smartly.io (フィンランド🇫🇮のマーケテック企業) の日本 1 人目社員。
現在は Moloco という US🇺🇸の機械学習・アドテク企業で、日本事業の責任者をしています。

前職が SaaS 企業ということで、第 1 回の #SaaSLovers 企画からずっと参加しています。
今の会社も、メイン事業はアドテクですが、新規事業で SaaS ビジネスもやっています。(今回そこは掘りませんが)

#SaaSLovers リレーブログ企画について

#SaaSLovers とは、有志で "SaaS に関する" ブログを日替わりで書く企画です。今回で 5 回目となり、今まで累計で 90 記事くらい上げています。

SaaS の特定業務領域を深掘りした内容もあれば、営業・マーケなど SaaS 以外でも使える一般的なものなど、かなり幅広い知識を得られます。
ぼくも毎回他の方の記事を読むのが楽しみなんですよね。

今回は昨日の DoubleVerify 小松さんの記事SaaS企業が買収する/されるとどうなるのか?M&A後の統合業務(PMI)についてを皮切りに、5 月まで毎日アップ予定。僕のこの記事は 2 日目です。

今回の参加者様。いつになくイカツイ

私、マネージャー 1 年目です

さて、僕のことを以前からご存知の方はこの記事タイトルを見て「お前ずっとカントリーマネージャーって自称してたやん」って違和感を覚えているかもしれません。

僕、これまでずっと Individual Contributor (個人貢献者) で、部下を持ったことが一度もなかったんですよ。

AppLovin 時代はずっと「日本 1 人目」を名乗っていて、カンマネを自称したことは無いんです。別の方がカンマネだったので。細かいこだわりでしょw
メディアやイベントや SNS で目立ってたので、勝手にカンマネと勘違いされてたことはよくありました。

前職 Smartly.io では上司と相談の上、便宜上カントリーマネージャーを名乗っていましたが (その方がビジネスしやすかったので)、実態としては最初の 1 年ぐらいは『日本唯一の社員 / セールス』(その時の生々しい苦労話は、2 年半前の同様のリレーブログ企画で書きました)、その後も『僕がセールス、あいつが CS、上司は別々』という状態でした。

カスタマーサクセスの荒井さんは、僕の部下では無かったんですよね。組織を『日本』という "地域" ではなく、セールス・CS といった "機能" で切るパターン。外資系ではけっこうよくあります。(参考記事)

社長の仕事が『1 人会社の社長』と『数十万人のグループ会社の代表』で全然違うように、カントリーマネージャーも規模や責任範囲など大きな幅があるものなんですよね。

なので昨年 (2021 年) 9 月に Moloco に入社して、元々いた 2 人のメンバーの上司になったのが、生まれてほぼ初めてのマネジメントです。

(厳密には AppLovin 時代に 2 ヶ月だけ、2 人のメンバーを持ったことがありますが、その後すぐに新規事業部門に異動したので、実質マネジメント業務は何もしてないですね。そのうちの 1 人が現在のカンマネなので、今の彼があるのは僕のおかげです。多分)

これは凄く良い勉強の機会をもらったな、という思いもある一方で、冒頭で書いた通りに『ある程度上手くやらんと会社やメンバーに迷惑かけるぞ』という危機感から、『マネジメントのやり方』『プレイヤーとの違い』を急いで学ぼうと決めました。

先輩マネージャーからのアドバイス & 参考書籍

まず最初のインプット元は、Pixiv 社 COO の清水 千年さん。Google 時代のチームメイト (僕が内定蹴ってなかったら新卒同期になってたので、一方的に同期意識を持っているw) で、半年〜1 年に一度ぐらい朝会して雑談しています。

彼のほうが組織や人のマネジメントについては数年先輩なので、何を学べばいいのかなぁ〜と雑に相談すると、1 冊の本をオススメしてくれました。

マネージャーって仕事の幅が広すぎて、何をどうすれば正解なのかが全然イメージがついていませんでした。
それをフレームワークに落とし込み、解像度を上げ、全容を理解する助けになったのがこの本でした。

特に参考になった箇所を要約。

日本語の『管理』は 3 つの仕事を意味する。
① Management (やりくり)
② Control (統制)
③ Administration (事務執行)
必要なスキルもメンタリティも違うし、1 人で全部をやる必要はない。分担すればいい。

スタープレイヤー・エース人材がマネージャーになる、というのがこれまで多かった。また、マネージャー個人の成功体験や属人性で何とかしようとしてきた。
マネジメントは専門職種なので、役割・タスク・要件など定義して、向いている人が、正しいやり方を学んで実行すべき。

マネジメントの対象を以下の 5 つと定義する。
❶ コミュニケーション (業務遂行に必要なコミュニケーションの設計)
❷ リソース (必要なヒト・モノ・カネ・情報の特定と調達)
❸ オペレーション (業務遂行や問題解決のプロセス・仕組みの構築)
❹ キャリア (組織と個人の成長に必要な要件定義、機会の提供)
❺ ブランド (組織の価値を高め、事業成長・人材採用に寄与)

マネージャーに求められるアウトプットは以下の 9 つ。
① ビジョニング
② 課題発見 / 課題設定
③ 育成
④ 意思決定
⑤ 情報共有 / 発信
⑥ モチベート / 風土醸成
⑦ 調整 / 調達
⑧ 生産性向上
⑨ プロセス作り
(全部一気にやらないといけないわけではないし、1 人でやらないといけないわけでもない)

これを解説してくれた後で千年さんは、先手を打って ❷リソース を要求し始めたほうが良い、とアドバイスしてくれました。
理由としては
⑴ 承認をもらって、実際に調達が完了するまでに時間がかかる
⑵ 『先を見て手を打っている感』は上から "良く見える"
というもの。

このアドバイスに倣って、最初の 3 ヶ月で Moloco Japan の中期事業計画と要員計画を作り、速攻で最低限の headcount を確保、採用活動を開始しました。
振り返ってみると、このタイムラインで全然『早すぎ』では無かったし、この一手が遅れていたらその後すごく苦労していたはず…助かりました。

という感じで、千年さんの助言 & 書籍『マネージャーの問題地図』のおかげで、なんとなく『マネージャーのお仕事の全体像』が見えてきました。

Transition Design Book 2.0 by リクルートマネジメントソリューションズ

もう 1 つのインプットは、リクルートグループの会社で、企業内研修・人事コンサル領域のトップ企業であるリクルートマネジメントソリューションズ社 (以下『RMS 社』) が出しているこの冊子。非売品です。

Transition Design Book 2.0 by リクルートマネジメントソリューションズ

もう何年も前に、RMS 社の奥野 康太郎さんという方にお願いして、『はじめてのマネジメント』という講義を、僕の友達や投資先社長向けにやってもらったんですよね。その時にお土産で貰った、100 ページ弱の薄い冊子です。

物理的には薄いんですが内容は超濃厚で…RMS 社が長年行ってきた調査研究をもとに、日本のビジネスパーソンにある 10 の役割のステージと、それぞれのステージにおけるゴールや DOs / DON'Ts がまとめられたガイドライン。
具体例も載っていて、めちゃくちゃ良い教科書です。

プレイヤーからマネージャーに transition (移行) しようとしている僕にとって、その 2 つの役割の違いと、新たに始めるべき行動・抑えるべき行動を、感覚ではなくファクト・研究結果から知ることは重要だと考えました。

なので改めて、『Leading Player』の次の『Manager (前期)』のページを熟読。内容はざっくりこんな感じです。

上手くトランジションできないとこうなっちゃうよ
❌ メンバーに仕事を任せることが中途半端になる
❌ メンバーの仕事を奪う
❌ 全てを思い通りに動かそうとしてメンバーに指示・命令ばかりする
❌ 優秀なメンバーだけで成果をあげようとして、全体の力を高められない

抑えるべき意識・行動
▲ プレイヤーであり続けようとする
▲ 細かいところまで全て指示・命令で動かそうとする
▲ 自分の経験則や考えにこだわり、他の考えや価値観を受け入れない
▲ 自分のやり方のほうが良い、全て分かっている、という驕り
▲ 仕事を回すことだけに関心が向き、人としてメンバーを見ない
▲ 好き嫌い、出来る出来ない、でメンバーを評価する
▲ メンバーの仕事を自分で巻き取って間に合わせる

伸ばすべき意識・行動
○ 経験則ではなく事実に基づいた判断
○ 組織の要請とメンバーの欲求の調和・統合
○ 組織の目標・計画・方針を自分の言葉で伝える
○ 仕事の優先順位を意識
○ 嫌われることをいとわずメンバーに向き合い、要望する
○ 日常からメンバーと接点・会話を増やし、変化を見逃さない
○ 結果責任は自分にあるという自覚をもって判断・行動

まさに攻略本ってカンジしません?
こういう指針が頭にあるだけで、自分の行動や思考を客観視したとき『あ、これマネージャーじゃなくてプレイヤーっぽいやつやん』って気付き、修正することが出来るようになる…少なくともその助けにはなると思うんですよね。

とはいえつい忘れて、慣れ親しんだプレイヤーとしての振る舞いをしそうになるので、定期的にこの冊子の同じページを何度も見返しています。

ボスや大ボスから学ぶこと

最後に、いま一番身近なマネージャーのお手本である、自分の上司や社長。めちゃ優しいので、僕が『マネージャー初心者やけん教えてくれ』と言うと、丁寧に教えてくれて、寛容に見守ってくれています。

僕のマネージャーは Minho Goh といって、Moloco では APAC のビジネスサイドの統括。前職では Criteo の中国・韓国のマネージングディレクター、その前は LINE の MENA 地域のトップ、Google、IBM、Samsung…要するに、めちゃくちゃマネジメントの経験・実績があるオジサマです。

彼とは毎週 1on1 をしていて、加えてその上のグローバルビジネス統括、その上の社長とも、2-3 週間に一度 1on1 をしています。

細かい指示をされることはほぼゼロで、会社の方針として (あるいは、彼らからの信頼の証として?) 日本に関する意思決定は "日本のことを一番よく分かっている" 日本チームに任せてくれます。
その上で、日本を伸ばすために "何が必要か"、どんなサポートが足りていないのか、を教えろと毎回聞いてきます。

ありがたいよねえ本当に。

で、僕は初期の頃からぶっちゃけて『僕のマネジメント経験の無さがリスク要因になり得る』『マズいところあったらすぐ教えて欲しい』『ベストプラクティスあったら教えて欲しい』と伝えています。
欧米的な文脈だと "自信のなさ" と捉えられてもおかしくないと思うんですが、幸い今のところ、素直にヘルプを求めている & 向上心がある、とポジティブに受け入れてもらっている模様。

1on1 では日本のビジネス状況に加えて、その時自分が考えていることや、意思決定したことの背景や思考プロセス、など極力細かく共有して、フィードバックをもらっています。
そうすることで、彼らの脳だったらどう考え、どう意思決定したか、自分との差分はどこか、を可視化できる。解像度高く、マネジメント強者の脳内をトレース出来るようになってきている…気がします。

マネジメントは俺に任せろ

そんなこんな学びを経て、マネージャーの仕事、すべき行動・思考が分かったので、もう完璧にマネジメント業務が出来るようになりました!

…とは到底言えません。。
ルールブックと解説書を読んだだけなので、まだまだ初級レベル、チュートリアル突破ぐらい。これから長い冒険 (レベル上げつつストーリー進行) が待っています。

とはいえ、やらなきゃいけないこと、さらにはまだやれていないことが明確になったので、その差分を埋めるべく日々精進しています。

この記事で紹介したフレームワークは今でも月に一度は必ず見直して、今月はこれが出来た、来月はこれを頑張ろう、とチェックするのに使っています。
皆さんの参考になるようなら是非使ってください & もし他にもオススメのフレームワークや書籍・動画・podcast 等あったらぜひ教えてください!

この note のコメントは必ず目を通していますし (スキ、SNS シェアもしてくれると嬉しい)、Twitter @tatsuosakamoto も DM 解放しています。

あともし良ければ、僕の YouTube チャンネル『坂本達夫のスタートアップ酒場!!』のチャンネル登録もしてもらえると超喜びます。割とマニアックなスタートアップ経営者や VC さんを深く掘り下げる対談番組です。誰より僕が楽しんで観てます。笑

そしてこの #SaaSLovers リレーブログ、明日は Hubspot 橋本 太一さんがお届けする予定です。お楽しみに!

そんなかんじですかね!最後までお読みいただきありがとうございました!

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Tatsuo Sakamoto (坂本 達夫)
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