#BtoBセールスのプロ を目指すシリーズ「提案内容作り・商談の進め方」(AppAnnie向井さん #旬トレ 2020年春 後編)
App Annie カントリーマネージャの向井さんに BtoB セールスについて教えてもらうシリーズ、前回の「初回訪問準備」に続く後編です!前編をまだお読みでない方、またはその更に前の記事を読みたい方は下記からチェケラしてみてください!
さぁ提案!のその前に
向井先生:基本は資料に落とし込むときには、公開情報をベースに。で、ここは課題だと仰ってますけど、課題を正しく理解したいので、いくつか質問させてください、って言って、課題にすぐ提案を繋げない。
坂本:課題にすぐ提案を繋げない。
向井先生:なぜなら、会社が表向きに出してる課題が、どれくらいお客さんの中で顕在化しているかどうか、わかんないじゃないですか。
坂本:えっと、会社が出してる課題が顕在化...?
向井先生:課題と書いているものがあっても、それが例えば、お会いする CMO の方にとってすぐにでも解決しないといけない課題として顕在化しているのか、それとも、株主向けに「やりますよ」っていう見せ方をしているだけなのか。そこは見極めなきゃいけない。
坂本:おーーーーなるほど。
向井先生:なんで、こういうことを謳っているけど、ここについてちょっと理解させていただきたいのでいくつか質問させてください、って聞く。これって今どういう状況なんですか、これを解決するために何が一番ネックなんですか、これを解決することに対する貴方の責任範囲ってどこまでなんですか、とか。会社が言っている「課題」に対する相手の解像度を高めてあげるのが先決。
坂本:深い。
向井先生:可能であれば、自分の中で仮説を作っておく。多分こういうことだろうな、会社の長期ビジョンのこんな所にしわ寄せが今後出てくるんじゃないかな、とか。資料にする必要もない。妄想なんですけど、ってぶつけてみる。
坂本:ふむふむ。
向井先生:「これは考えてなかったわ」って反応のケースもあるし、「これ検討したんですけど止めたんですよね」って返ってくることもあるし、否定的な考えを持っているかもしれないし。
坂本:ありますね、ネガティブなバイアス持ってること。
向井先生:そういう反応が来ることを想定して、あらかじめカウンターとなる情報を用意しとくとか。御社と似た課題を持っていた Smartly.io のこんなクライアントで、こんな結果を出したケースがあるんですよ、って入れとくことは出来るよね。
坂本:うーんなるほど。仮説力高い。
向井先生:課題から、妄想できる範囲で仮説に落としておくっていうのが、大事。仮説をいきなり刺しに行くのが目的じゃなくて、相手に当てた時に「そうじゃなくてこっちだよ」っていうのを引き出すために仮説があるんだよね。そのためには、いくつか仮説あった方がいいよね。
坂本:トランプ 1 枚ずつ出していって相手の反応を見る、みたいですね。
向井先生:その呼び水として、公開されている情報をもとに、「これってこういう理解で合ってますか?間違ってますか?」って話をする。全然違っていたらその先のは出せないんだけど、大きく間違ってないよっていうことであれば、ちょっと妄想聞いてもらっていいですかって仮説を投げてみる。理解が間違っていたら正しい情報を詳しく教えてもらう。
坂本:めちゃ理解深まりそうだ。
向井先生:っていう、解像度を高めるためのトランザクションを初回訪問でやります。提案の1歩手前ですね。いきなり提案はしない方が良い。
坂本:なるほどねぇ。
相手のソーシャルスタイルに合わせた話の組み立てをせよ
坂本:ちなみに初回訪問の時点で、向井さんだったらお客さんに「今回、提案はしません。話を聞かせてもらうことが目的です」みたいなこと、最初に言いますか?
向井先生:相手のソーシャルスタイルによるね。
坂本:出た、ソーシャルスタイル。
向井先生:相手がドライバー系だったら先にアジェンダを言う。
・目的はこれです
・そのためにこういう準備してきます
・こういうことを確認させていただいた上で
・もし話を進めさせていただけるんでしたら、次回に提案を進めさせてもらいたいので
・そのためのミーティングです
って言っちゃう。
坂本:なるほど。そうじゃないと質問のやり取りの中で、これ何のための打ち合わせ?みたいに思われちゃうから。
向井先生:そうだね。あとは、質問に答えるだけじゃない状況を作っといてあげないと、2 回目以降めんどくさくて会ってくんない。
坂本:質問に答えるだけじゃない状況っていうと例えば?
向井先生:例えば、先方の業界の近しいところにおける活用事例とか。国内外であるので、いくつかお持ちしますねって言えば、その人にとってもメリットがあるよね。答えていただくばかりだと時間がもったいないと思うので、って。
坂本:なるほど。
向井先生:まとめると、初回訪問時には、「まともな会社だよ」っていうのをちゃんと伝えた後に、妄想・仮説をぶつけながら「課題の認識を相互理解する」ことを目的としたヒアリング。妄想ストーリーの中には、示唆質問的な奴も含める。これ放置しとくと、あなたの中期・長期ビジョンで言ってるこれに影響しませんか?会社がコレやるって言っちゃってるけど、今着手しなくて大丈夫ですか?みたいな。
坂本:それやるのは、CMO であるあなたの責任ちゃうけ?みたいな。
向井先生:それでいうと、CMO って何やってるんですか、会社によって違うんですけど?って訊いちゃってもいいかも。
坂本:なるほどね。示唆質問かぁ、前回の勉強会と繋がるなぁ。
向井先生:App Annie だと、訪問前にお客さんのアプリの利用データを見て行ったりするんだけど、知らない体で、例えば「この業界よく、アプリを立ち上げる頻度が減ってきて困ってるって聞くんですけど、同じこと起きてませんか?」みたいに問題質問したりする。
坂本:そうなんですよー、ってなりますね。
向井先生:「立ち上げられる回数が少なくなるってことは、データが取れなくなりますよね?」っていうのが示唆質問。っていうのをやってあげると。
坂本:面白いー。なるほどね。
会う前に確認しておくべきことが、そこにはある
坂本:ドライバータイプの人には先に「当日のアジェンダ」と「これがお土産です」って先に伝えちゃうって話だったじゃないですか。他のタイプの人だとこういう風に進めるのがいい、みたいなのあります?
向井先生:基本、CMO クラスになったらタイプにかかわらず事前にアジェンダの確認をした方がいいよね。あわせて、当日のアポの目的と、コチラに対する期待値とを事前に目線合わせておく。
坂本:ふむふむ。
向井先生:あとは、提案したい施策、例えば Smartly.io だったらデジタル広告関連の施策は、具体的に検討することが可能なのか?それとも今は全く考えていないのか?仮に前者であれば、半年以内に何とかモノにしたいのか、1 年なのか、それとも 5 年後なのか?ってうい時間軸。
坂本:なるほど。
向井先生:この【アジェンダ】【アポの目的】【先方の期待値】【時間軸】の 4 つは、ざっくりでいいからアポの前に聞くべし。会う 2 営業前とかに、リマインドでーすっていう体で電話して。
坂本:電話するんですね。
向井先生:した方がいい。忘れるからね。今日なんだったっけ!?ってなるから。
坂本:確かに、忙しい人ほどそうですよね。
向井先生:で、当日会ったら、もう一回同じ話をする。「今日の目的は前回お電話した通り、これとこれとこれとこれっていう理解でいますけど、間違いないですか?」っていうところまで確認してから会話に入る。これは別にソーシャルスタイル関係ないね、CMO クラスだったらそれぐらいはやって当たり前だから。
坂本:なるほどー…。
初回訪問用の資料の構成とは?
向井先生:だから、話す内容は毎回オーダーメイドになるかな。でも初回訪問用の資料は、ベースの部分は使いまわしでいいよ。
坂本:あ、そうなんですか。
向井先生:その後に「御社がやろうとしていることの正しい理解をするための資料」って風にして、中計や決算説明会資料で株主に説明してる内容とか、この辺をちょっと理解したいので、いくつか妄想ストーリーを用意したので見てもらっていいですか、って風に 3 スライドぐらいで説明してあげる。
坂本:ほー。
向井先生:前半は全部一緒で良い。変えるとしたらロゴの配置の順番くらいかな。相手と同じまたは近い業界のクライアントがいたら、そのロゴをちょっと上に持ってくる。
坂本:状況を確認するところは、先方のサイトのスクショとかを貼り付けて、妄想ストーリーは「こういう風に考えてきました」って、テキスト箇条書きでもいいから何個か出す、みたいなかんじですか?
向井先生:エグゼクティブサマリー的なやつだね。公開情報を読み込んで、それを咀嚼して「自分なりにこの 3 つの要素に分解してみました」ってまとめるかんじかな。それぞれにおいて、今こういうことが課題だという風に推察していて、それによってこんなビジネスインパクトが起こりえるんじゃないかなって理解してますが、正しいですか?ってまず聞くと。
坂本:ふむふむ。
向井先生:で、大きく間違ってなければ次。それぞれの問題の及ぼす影響というものが CMO という立場上あまり看過できないんであれば、それを解消する価値をビジネスインパクトという観点から説明しますって言うと、あまり営業っぽくてやらしい感じにはならない。でも、それは人によるかな。
坂本:人によるっていうのは、最初からプロダクトとかソリューションとかを説明してよ、みたいな人もいるってことですか。
向井先生:そう。アナリティカルなタイプの人だったら、いわゆるストーリーラインとプロダクトを分けて理解したがったりするからね。御社は結局、何をしてくれるんですか?とか。
坂本:それも結構あるんですよね。
向井先生:え、坂本さんが来てコンサルしてくれるんですか?とか言われないようにするためにもね。アナリティカルな気鋭の人は結構、そういう視点で見がちなので。いや、うちはツールとサポートを提供します、あなたたちはこのストーリーを実現させるため主体的にこのツールを使わなきゃいけません、っていう風にちゃんと説明しなきゃいけない。
坂本:わかりみが深い。
アイスブレイクでは天気の話...ではなくこんな流れで
坂本:以前のセールストレーニングの時、初回訪問でいきなりピッチをしない方がいい、プロダクト説明から入るのは NG だ、みたいな話はあったと思うんですけど。そもそも App Annie って何なのか、みたいな話は求められない限りはしない感じなんですか?
向井先生:いや、それは前段、一番最初にする。どこの何者なのかってところは、ちゃんと身元を明らかにして話すこと。
坂本:それ大体どれぐらいの時間をかけます?
向井先生:合いの手がお客さんから入らなければ、ものの 5 分くらいで会社の話は終わるんですよ。そのかわり、僕が App Annie のフィールドセールスやってた時は、お客さんの業界に近しい事例や情報を持って行って紹介したりしてたよ。
坂本:例えばどんなのですか?
向井先生:モバイル × ビジネスっていう文脈で、ゲーム以外の、モバイルを活用した新しい顧客体験が登場したケースとかだね。当時だったらライドシェアとか。今、モバイルってこんな感じで生活者に浸透しているんですよっていうファクト情報をその後に付けて。
坂本:App Annie には関係ない情報?
向井先生:関係ない。自分とこのプロダクトとかクライアントではなくて、モバイルってものがあなたたちにとって他人事じゃない領域にまで浸透しているんですよ、あなたのお客様はこういうサービスに触れているんですよ、っていうことを伝えるためのファクトですね。
坂本:これは真面目に聞いたほうがいいな、ってなりそうですね。
向井先生:そうそう。相手が知らない業界のファクトを引っ張ってきたりとかも効果的だね。それも、自社の言葉じゃなくて、色んなメディアだったり、データから言えることだけを並べてくのが有効。
坂本:客観的事実感ですね。
向井先生:その上で、同じようにテクノロジーとかっていうのが長期のビジョンの中に入っていたので、おそらく御社もデジタルに取り組もうとしてるって理解をしてますけど、そういう理解で正しいですかっていう。
坂本:繋ぎが上手いですね。唐突感もないし。押しつけてるんじゃなくて、貴方たちがこういうことを言ってたから、こういう話をするんですよって流れですね。
向井先生:いま世の中はこういう感じになってきてるんですよ、ここまで知ってましたか?っていうところから入る。事前の電話とかでネタの 1 つとして出してもいいんですけど。おそらく相手が知らないと思うような、異業種のデータとか施策・ケース、いくつかお持ちしますねっていうのを付けてあげればいい。別に Smartly.io と直接関係なくてもよくて。
坂本:そっか、うちでもこういうことできればいいなぁ、って思ってもらえればそれでいいんだ。
向井先生:その時点ではプロダクトの説明は無くていい。まずは「こっち側の世界」に入ってくるつもりがあるのかどうか、事例を紹介して状況質問で、今やっていることとか、今後どういうことを考えているのかとかを訊いてあげればいい。用意した資料に被せて質問しちゃえば良くて、凄く自然な感じ。
商談化しなかった場合はどうするのか
坂本:その質問のやり取りの結果として、これはリードにならんなって判断することもあります?
向井先生:ある。
坂本:そういうときはどうするんですか?追いかけない?
向井先生:相手の肩書がエグゼクティブで、にっちもさっちもいかないような反応、例えば「オフラインだよ、うちの会社は!」みたいな感じだったら、啓蒙ですね。ナーチャリングにプッシュバックします。セミナーに呼んだり、ホワイトペーパーのご案内したり。
坂本:なるほど〜。そういうのやる人ウチも早く日本で欲しいな...
C職にはこうやってアポをとれ!
向井先生:あとはそうだな...トップダウンの会社は、下から行くの難しいから、社長に手紙書いて会いに行くのがいいよ。こういう理由で会いたいです、って。
坂本:手紙なんですね。
向井先生:やる価値はありますね。それこそクラウドソーシングで筆ペンで綺麗に書いてもらえばいい。
坂本:メッセージと送り先の住所を、スプシに入れとくから送っといて、みたいなかんじですか?
向井先生:本文は印刷で大丈夫。手書きにするのは、封筒の宛名と住所。これを筆ペンで綺麗に書くと、秘書は捨てないので。
坂本:へー。そういうもんなんだ。
向井先生:そういうもんなんです。捨てられない。
坂本:大事かもしれないね、みたいな。
向井先生:そう。封筒の裏に自分の会社の名前も入れない。そうすると、開けちゃうので。
坂本:ほう?
向井先生:開けてもらうまでのハードルをとにかく下げる。
坂本:おもしれー!そういうことすればいいんですね。
向井先生:昭和のやり方だけど、いまだに使われる。なぜなら、相手が昭和のビジネスマンだから。
坂本:そっか、特にレガシーな産業や古い企業の役員たちとか、なんなら自分たちがやってたかもしれないですもんね。
向井先生:そう。でも、今話したこれは別に唯一解じゃないからね。公開情報だったり、事前に電話した時とかにいっぱい喋ってくれて、「これでちょっと提案できる?」 みたいに言われた場合とかは、いきなり本題いっちゃっていい。
坂本:そうなんですね。事例とか仮説とかは?
向井先生:全部、appendix として後ろに付ければ良い。そうじゃなくて、とりあえず少し話して、何か提案できるかもしれないから行きます!っていうくらいのノリだと、何か準備して行った方がいいね。
2回目の訪問への繋げ方
坂本:2 回目訪問についても教えてください。事前に細かく質問のやり取りができている場合は初回訪問かもしれないけど。ヒアリングしたお客さんの課題に基づいて、こういう風に解決しましょうみたいな具体的なソリューションを持っていく感じですよね?
向井先生:うーん。明確に Smartly.io が解決できる課題を、お客さんが「すぐにでもやんなきゃまずい」っていう状態だったら、提案すればいいんですけど。その状態じゃなかったら、提案しちゃ駄目なんですよ。
坂本:課題に基づいた提案でも、まだダメですか。
向井先生:「Smartly.io が解消する課題」によって、一般的にはこんなことが起こりえちゃうんですよ、っていうところを触れてあげないといけない。なぜなら「解決しなきゃ」って思わないんで。
坂本:ほあー。
向井先生:示唆質問の、より相手に影響を及ぼしそうなものに触れながら、これが起きたらどうですか?って危機感を煽る。あるいは、これが解消したらあなた出世するんじゃないですか、みたいなところを話すプロセスが、提案の前のフェーズで必要になりますね。
坂本:それは初回訪問の最後でやるかんじですかね?2 回目訪問それだけで終わっちゃうこともあり得る?
向井先生:2 回目訪問で提案に持っていけるように、1 回目である程度、状況質問して問題質問して、ある程度聞いた後で示唆質問をして、これ確かにやんなきゃまずいですねって温度感に持っていきたいね。
坂本:やっぱそうですよね〜。
向井先生:んで、色々と手段はあるんですけど、相対的に見て Smartly.io が優れているポイントも含めて、ちゃんとご提案させていただいてよろしいですかって。ちゃんと提案する承認を貰って、次回の日程をその場で決めちゃう。で、終わり。
坂本:なるほどー。いやあ、繋がりますね、以前のセールストレーニングと。あの内容が TO DO に落ちていく感覚です。
向井先生:実際に仕事に使うイメージがついたかな。
坂本:そうですね。今の話で綺麗に理解できたことがあって。提案を個別にやろうとすると、会社ごとに状況違うから、1 件ずつの準備とか、資料作りとか、どんだけ時間かけたらええねんくらいに思ってたんですけど。
向井先生:うん。
坂本:どっちかっていうと、仮説作るところは多少下準備が必要ですけど、それ以外は、質問して状況聞き出すとこと、ニーズを顕在化させるところだから、そこまでカスタマイズした資料が必要って話じゃないですね。
向井先生:その通りです。
坂本:最後の提案のところは、それまでで課題が相互理解できているって時だけっていう前提だから、これをやりましょうってストレートに言えばいい。
向井先生:そう。資料もそんなに作り込まなくてもいい。
坂本:なんだったら、アクションプランのガントチャート作るとかでもいいくらいですよね。
向井先生:Smartly.io で何ができるか、他でできないものは何なのか。コンペリングイベントとして、今やると何がいいのか。無駄に人を抱えて工数をかけるのを全部やめます、そのコストをマーケにかければトップラインもこれだけ伸びる、先延ばしにする理由ってないですよね?っていうのがコンぺリングイベント。これが無いと先延ばしにされるので。
坂本:それをワンセットにして提案の時に持っていけばいいのか。
向井先生:そうっす。
坂本:これは、やばい。また今日、感動の脳汁が出てます。
向井先生:それはよかった。じゃあ、次の予定があるから。
坂本:ありがとうございました。マジでありがとうございました。